三空ラバーズに39のお題

□10.これは闘い
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――カラン カラン………

「ッ…!」

どこか小気味良い音と共に、如意棒が固い地面へと音を立てて落ちた。
悟空は自分の右手を抱えるように地面に膝を付き、突き抜けた痛みを押さえ込むようにぎゅっと目を瞑った。
右手はズキズキと痛み、まだ骨が固定されきっていないのか、感覚がおかしい。
紅孩児に踏みつけられて折れた右手は、未だに悲鳴を上げている状態。

「バ、カだよな………」

そう呟いて、悟空は自嘲的に口元を歪める。
未だに痛む右手には、固定のためにサポーターが嵌められている。
元は白かったそれは、今こんなことをしているためか土がついて所々茶色に汚れていた。
その右手をもう一度見てから、悟空は地面についていた膝を起こして、再び立ち上がって如意棒を手に取った。








――ザッ……

土を踏みしめる音が聞こえた。
悟空以外の人物が、近くに歩み寄る音。

「…………何しに来たんだよ」
「……別に」

如意棒を両手で握り締めて、来た人物には視線を向けないまま声を掛ける。
悟空がいる場所は宿屋の裏手にある場所で何もないところだから、ここに偶然来るなんてことは考えられない。
振り返ると予想どおり、そこには三蔵が立っていた。
法衣のままの三蔵は、懐から煙草を探って火を点して吸い始める。

「煙草なら、部屋でも吸えんだろ」
「外の空気も吸いたくなったんだよ」

それならわざわざこの場所に来なくてもいいだろう、と思う。
なんで、こんな時ばかり放っておいてくれないのだろうか。

「………放って、おけよ」

三蔵を真っ直ぐ見つめて、握る如意棒に力を込める。
右手はまだズキズキと痛んでくるけど、そんなことに構っていられるほど、安易な旅を自分たちはしていない。



「これは、俺の闘いなんだ」



たとえ、三蔵だとしても入り込めない闘い。




 
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