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□旅行
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「もう!どうして分かってくれないのよっ!」


私は苛立ちを抑え切れずに言った


「分かんないね!
好き合ってたら当たり前の事だろっ!」


チャンソンも私に負けじと対抗して来る


「もういい、帰る…」


くるりとUターンするとチャンソンはすねて帰ってしまった

私は追いかける気力もなくなって小さくなってゆくチャンソンの後ろ姿を眺めていた


最近はいつもこんな感じでケンカ別れになってしまう
でもその日のうちにチャンソンから仲直りメールが来るから長引く事はないんだけど…


ケンカの原因は分かってる

私だ…


チャンソンと一緒にいていいムードになると必ず私が拒むから…

始めのうちはチャンソンも大丈夫だよ、なんて言ってたけど最近は前にも増して険悪になるから私も頭を悩ませている


するとさっき別れたばかりのチャンソンから早速メールが来た


いつもよりずいぶん早いなぁ…?


私は首を傾げながらメールを読んだ


〈週末旅行行こう!
寒くなってきたから温泉がいいな〜〉


はっ?

温泉っ?


チャンソンの考えってホント単純…


私は軽く吹き出した


でも…この誘いが最後のチャンスかもしれない

私はそう感じた


これはもう、年貢の収め時か…



私は腹をくくった…




「晴れて良かったね」

チャンソンの運転する車はある県境の山中にさしかかっていた

あのお誘いメールからあっという間に今日になってしまった

一応出来る限りの事は全部やってきたつもり

でもやっぱり私は覚悟が出来なかった


「そしたらそこでテギョンヒョンがさ…
名無しさん聞いてる…?」


チャンソンが呆れたようにため息をついた


「やっぱり帰る…?」

チャンソンが濡れた子犬のような瞳で私を見て言った

私はそんなチャンソンがすごく愛おしくなった
なんだかんだ言っても私をいつも一番に心配してくれる


「さっきからずっと上の空だしさ…
名無しさんがそんなに嫌なら俺…ガマンするよ…?」


ますます捨てられた子犬みたいになってくチャンソン…


「私別に嫌だなんて言ってないよ?」

「ほんとにっ!?」


急に瞳を輝かせて大喜びするチャンソンが本当にかわいい

小さな子供みたいに無邪気な顔してる


ねぇ、チャンソン…

知らないでしょ…?

私の気持ちはいつも一緒なんだよ…

ほんとは身も心もすべてチャンソンとひとつになりたいって

ずっとずっと思ってるんだよ…


運転するチャンソンの横顔を眺めながら私はチャンソンへの愛しさがこみあげていた…





それからほどなくして私達は目的地に到着した


「旅館…だったの?」

私はぽつりと言った。

「嫌だった…?」


チャンソンが心配そうな顔で私を覗き込んだ


「いや、そうじゃないんだけど…」

「じゃ、早く行こう!」


そう言って元気いっぱいのチャンソンに引っ張られながら私は旅館に入ったのだった…
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