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□「守りたいもの」2
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日本に来てからもやっぱり仕事は忙しかった。

TVに雑誌の取材、撮影…目が回る程忙しい。

でもここは日本。
名無しさんがいる日本!

そう思うだけで人一倍頑張れた。

会いに行ける距離に
名無しさんがいるなんて本当に夢みたいだ…


「チャンソン…顔、ヒドイ事になってるよ…?
ニヤニヤして…頭でも打った?」

隣でヘアメイク中のジュンスヒョンにふいに言われて僕は我に返った。


「へっ…?何が…?」

この時の僕は本当にまぬけな声を出していたと思う…。

「ほら…よだれまで出てるよ?」

「うそっ!?」

僕は慌てて口元をごしごしとこすった。

「ウソだよ!」

そう言って楽しそうに笑うジュンスヒョンを尻目に僕は内心ヒヤヒヤしていた。

僕そうとうヤバいかも…

こんなに簡単に顔に出ちゃったらばれるのも時間の問題かもしれない…

僕が軽くパニクっているとジュノがすかさず言った。

「チャンソンはまた食べ物の事でも考えてたんだろー?
まったく幸せなヤツだなぁー!」

僕はジュノのナイスアシストに感激していた。

これなら今朝の発言も許してあげる…

そんな事を考えながら僕はほっと胸をなで下ろした。




なんだ、さっきのチャンソン…
気持ちの悪い…

俺はさっきのチャンソンのにやけ顔を思い出していた。

女か…?

いや、そうだったら
とっくに皆に紹介してるはずだ…

少なくとも今まではそうだったはずた。


じゃあ、やっぱり食い物か…

本当にあいつは幸せなヤツだなぁ…

と俺がなんとなく納得していると突然携帯の音が鳴り響いた。
とっさに自分のかと思い携帯を手にしたがそれはすぐにチャンソンのものだと分かった。

「あれ?チャンソンどこ行ったー?」

俺は誰ともなく聞いた。

「あー、チャンソンならさっきトイレ行ったよー?
急ぎだといけないからジュンスヒョン持ってってあげて」

ウヨンがのんびりと言った。

何で俺が…
確かに一番近いのは俺だけどさ…

ぶつぶつ文句を言いながらも俺はチャンソンに持っていってあげる事にした。


いっその事切れちゃえばいいのに…

そんな邪な事を考えながら、チャンソンの携帯に目を向けた。

ディスプレイには発信者名が光っている

俺は無意識にそれを覗いた。
え…?
女…?

俺はなんだか悪い事でもしてしまったかのような気分になった。

なんだよ、何で俺がドキドキしなきゃいけないんだよ…!

大体チャンソンの携帯には女のメモリーなんて腐る程入ってるだろっ。

俺は歩きながらふと、思った。


でも…あの名前…
初めて見るな…

チャンソンの交遊関係は大体知ってるつもりだけど…


それにあの名前…
日本語だった。

俺はまだ日本語あんまりわからないけどあれは確かに日本の女の子の名前だ…


俺は今朝のにやけ顔のチャンソンを思い出しながらなぜだかドキドキしていた…





「あれ?チャンソン、ジュンスヒョンに会わなかったの?」

ウヨンが部屋に戻った僕に唐突に聞いた。

「え?何で?」

「だって…さっきチャンソンの携帯が鳴ってたからジュンスヒョンがトイレに持ってってあげたんだよ?
すれ違いになったのかなぁ?」

のんびりと話すウヨンを見ながら僕は何故か焦っていた。


もしかして名無しさんからだったかも…?

名無しさんから今まで来た事なかったから全然気にかけてなかった…!
もしかしてジュンスヒョンにばれた…?

僕は再び部屋のドアを勢い良く開け廊下を走った。

「もう、騒がしいなぁー」

ウヨンがお菓子を食べながら呟いていた…。
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