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□Between the sheets Part4
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それはあまりにも突然の出来事だった

いつもと変わらない毎日のはずだった



「名無しさんさん、ごめんね…今日は泊まれそうにないや…」


そう言ってチャンソンは残念そうな顔をして私をふんわりと優しく抱き締めた


「最近特に忙しそうだもの…気にしないで…それより私はチャンソンの身体の方が心配だよ…」


私は鍛え上げられたチャンソンの胸にそっと手を伸ばした


「大丈夫だよ!俺は名無しさんさんに会って元気もらってるんだから…」


チャンソンは優しく瞳を揺らすと私を見つめた


「愛してる…」


そう言ってチャンソンの柔らかな唇が私の唇を塞いだ


別れ際のこの瞬間が私は一番苦手だ

いつもいつも胸が苦しくて涙がこぼれそうになってしまう

すぐにまた会える…そう思ってもいつも不安になってしまう


「愛してる、名無しさん」


不安な私の気持ちを気使ってか、いつからかチャンソンはそう言って別れのキスをするようになった

私はそんなチャンソンの気持ちがすごく嬉しかった


「じゃあ…おやすみ…!」


そう言って私はいつものようにチャンソンを見送った

ベッドに座り一息ついた時、突然部屋のベルが鳴り響き私は軽く驚いた


チャンソン、忘れ物でもしたのかな…

そう思った私は何のためらいもなく扉を開けた


けれどそこにいたのはチャンソンではなかった


頭が真っ白になってただ立ち尽くしている事しか出来ない私は冷ややかな言葉を浴びせられた


「予想通りの反応ですね…!

多分私の事分からないかと思いますけど、とりあえず中に入れてもらえますか?」


そう言うと私の返事も待たずに、女は部屋の中へと強引に入り込んできた


「あの、ちょっと…!」


私は慌ててその女の後を追うように部屋へと進んだ


「ちょっとあなた…部屋間違えてるんじゃ…」


そう言ってもう一度その女の顔を見た瞬間、私はすべてを理解した


「間違えてなんていません!」


そう言って敵意剥き出しで私をにらみつけた

小さくため息をつくと私はゆっくりと口を開いた


「あなた…チャンソンの彼女ね…?ごめんなさい、名前までは分からないけど」


とても驚いた顔をして私をくいいるように見つめている彼女を私もじっと見つめ返した


すぐには気付けなかった

あの時、チャンソンと一緒にいた女の子だと…


あの時は一瞬だったし、何より私の目の前に現れるなんて想像すらしなかったから…


「私の事…チャンソンから聞いたの?」


そう言っていぶかしげな表情で私を見つめていた


どう答えれば良いか迷った私は話をそらした


「それより…私に話があってきたんでしょう…?」


その言葉を聞いた彼女は唇をきゅっとかみしめ顔色を変えた


「あんたみたいなおばさんに…!チャンソンどうかしてる…!!」

私はただ黙って聞いていた


そうだった

あの時もこんな風にチャンソンに怒ってたっけ…


「チャンソンはあんたみたいなおばさんが付き合えるような男じゃないの…!!

私と別れてまでこんなおばさんとだなんて、どうしても許せない…!!」


そういう事だったのか

私はようやく納得できた


今日まで私はチャンソンの彼女の事を追及した事はなかった

お互いの気持ちを確かめ合った後でも私には夫がいて、チャンソンには彼女がいるという事は消せない事実だったのだから…


だけどまさか別れていたなんて…

私は彼女をもう一度見つめた


若くて、エネルギーに満ちていてとても美しい子だ


確かにこの子の言う通りかもしれないと思った


この子じゃなく私を選んだチャンソンはどうかしてるのかもしれない



「はっきり言うわ…

チャンソンともう会わないで!!」


私はため息と共に身体中の力が抜けていくのを感じていた…
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