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□Between the sheets Part5
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チャンソンに分けてもらったはずのたくさんの勇気も私の中に残り少なくなってしまっていた


あれから私は夫に別れ話を切り出した

けれど夫の答えはNOだった

私は理解出来なかった
私を愛してなどいないのにどうして別れてくれないのか

なぜ…?

機会を見ては何度も話してはみたが、いつも嫌だ、の一点張りだった

予想通りの苦戦ぶりに私は少し疲れていた

そんなチャンソン不足の私は全身でチャンソンを求めてもがき苦しんでいた

けれどチャンソンに頼ってばかりじゃダメだ…!

こんな事じゃダメだ…!

私は自分を奮い立たせるのに必死だった


別れる事を決意したとはいえ私一人で出来る事じゃないという事を痛感した

私は不安に押しつぶされそうだった

チャンソン…ちょっとだけ勇気を分けて…!

そう祈った時、携帯が着信を知らせた


「名無しさん、何してる…?急に声が聞きたくなって…」


チャンソンのいつもと変わらない優しい声に私は安心した


「今、チャンソンの事考えてたら電話が来たんだよ…!
なんだかすごく嬉しくて…」


私は震える声を必死に隠しながら言った


「名無しさんさん…大丈夫…?ムリしてるでしょ…?

そんな声聞いたら…抱きしめたくなる…!」


電話超しのチャンソンの切なそうな声に私は胸が震えた


「私は大丈夫だから心配しないで…?
チャンソンも…身体大事にしてね…」


「名無しさんさん…会いたいよ…!
会いたくて会いたくておかしくなりそうだよ…!」


チャンソンの苦しそうな声に私は胸が張り裂けそうだった


「私も会いたい…!チャンソンに会いたいよっ…!」


私は思わず悲痛なまでの心の声を吐き出してしまった


「だったらっ…!」

「でも…今はまだだめなの…!
もう少しだから…
愛してる、愛してるよチャンソン…」


私はそう言って精一杯の我慢をして電話を切った

それはほんの数分の電話だった
けれど私の胸はいつまでも鳴り止む事はなかった


夫ともう一度話し合おう


そう思えるだけの勇気をチャンソンからもらえた私は世界一の幸せ者だと心から思った
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