BOOK

□彼
1ページ/20ページ


右に元カレ

左に今カレ

今私の目の前には二人のカレがいる


右の元カレ、チャンソン

左の今カレ、ニックン


そして私

普通なら絶対気まずいこんなシチュエーションも私達は何故か平気


いや、少なくとも私は、だが。


「名無しさん、口にクリーム付いてる…」


そう言ってチャンソンが私の唇についたクリームを指で拭ってペロリと舐めた


「ああ…ありがと…」


私は読みかけの雑誌から目を離す事なくそう言った


「名無しさんそろそろ行こう…!」


ニックンが強引に雑誌を閉じて私を促した


「じゃあね、チャンソン…!」


そう言うとニックンは私の腰に手を回して強く引き寄せると歩き出す


「じゃ、じゃあねっ…!」


強く腰を抱き寄せられながら私はなんとかチャンソンにあいさつをした


「名無しさん」


人気のなくなった辺りでニックンが私を呼んだ


「なぁに…」


そう言い終わるか終わらないかでニックンがふいに私の唇を奪う


「ん…っ…」


激しいキスの洗礼を受けて私は思わず声を震わせてしまった

するとニックンは私の頭を押さえて更に深く繋がるように角度を変えては激しく私を求めた


「はあっ・・二ッ・・クン・・・」


ニックンの激しいキスは苦い嫉妬の味がする

いつもの甘くて優しいキスよりも何倍も何十倍もニックンの愛を感じて私を痺れさせる


私はたまらなくなってニックンのシャツをぎゅっと掴んだ

するとニックンはやっと唇を離して大きく息を吐いた


「またチャンソンの挑発に負けちゃったよ」


そう言って少し肩を落とした


「気にしない、気にしない」


この言葉を果たして私の口から出して良いのかどうか疑問だったけどとりあえずそう言ってニックンの背中を軽くたたいた


「夜ごはん、僕が作ってあげるね」


そう言って優しく微笑むと私の手に細い指を絡めた


「ほんと?やった〜、楽しみ!じゃあ早く帰ろ!」


そう言うと私はニックンのぬくもりを確かめるように強く握り返してそっと寄り添った


「何作ってくれるの?ねえねえ、教えて!」


「名無しさんの好きな物何でも!」


そう言って私を優しく見つめた

ニックンの優しい眼差しは私の心をいつもあったかくしてくれる


こんな気持ち、チャンソンといた時には得られなかった

いつもいつも不安で胸が苦しくて張り裂けそうだった


私ばかりがチャンソンを好きすぎて苦しくて結局、自分で壊してしまった


だから変わらない優しい愛で包んでくれるニックンを選んだ

愛するよりも愛される方が幸せなんだって事を教えてくれたのは他でもない、ニックンだったから・・・
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ