BOOK

□とげとげ病
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「ねぇ…チャンソン?」


ぼうっとTVに見入っているチャンソンに声をかける


「なーに…?」


チャンソンは視線をTV画面に向けたまま気のない返事をした


「あの時って…何考えてパフォーマンスしてるの?」


ようやくチャンソンが私に視線を向けて答えた


「あの時…?」


頭の上に?マークを並べたような顔して身を乗り出した


「あなた達の楽曲の中で一番濃厚でセクシーなあの曲の事です!」


するとチャンソンはああ、あれねと言って笑った


「あの曲がどうしたの?」


いたずらっぽく笑うチャンソンの笑顔は本当にかわいい


「あの曲のパフォーマンスの時…いつも何考えてダンサーと絡んでるわけ?」


私はなるべく淡々と話すふりをする

だって嫉妬してるなんて思われたら格好悪い


「名無しさん、もしかして妬いてるの…?」


「ち、違うよっ!!
私はただちょっと聞いてみたかっただけで…!」


チャンソンには私の心の中なんて簡単に読まれてしまう
私はなんて単純なのだろう


「ヌナって普段はしっかりしてて俺の事弟扱いするくせに…」


そこまで言うとチャンソンは私の耳元に顔を寄せて小さく囁く


「急にかわいくなるからいじめたくなっちゃうよ…」


チャンソンは耳元にキスを落として吐息を漏らした

敏感に反応してしまう身体を私は必死にごまかす


「だって、あの時のチャンソン…すごく…その…」

「セクシーだから?」


チャンソンはそう言って笑った


「だけど俺ってそんなにセクシーかなぁ…?
みんなそう言うけどさ、俺なんかよりヒョン達の方がずっとセクシーじゃない?」


そう言って首を傾げた


このマンネは本気でこんな事言ってるんだろうか…?

だとしたら相当タチ悪いよ…?


確かに普段のチャンソンはとぼけてる事多いし、かわいいって感じる事の方が思い


でもひとたびステージに上がるとまるで別人みたいになってしまう

だから…

あのパフォーマンスも何だかまるで別人みたいに感じて私の心をざわつかせる


「あの時は…ダンサーさんの事名無しさんだと思ってやってるよ」


チャンソンは少し恥ずかしそうに 私を見つめた


「ウソばっかり」


私は思わず冷たく言い返した


「なんで…?ウソじゃないよ?
名無しさんだって思わなかったら、いくらパフォーマンスだからってあんな風に出来ないよ」


いつになく真剣な顔のチャンソンに私の胸は激しく高鳴る


「へ〜、優等生的回答だね」


私はそう言って冷たく突き放した


「本当だってば!」


真剣なチャンソンを尻目にハイハイと軽く受け流して平静を保とうと必死だった


だってどこから見たってあのダンサーとチャンソンの二人はお似合いだ

まさに絵になる二人

だからってチャンソンがあのダンサーさんに気があるとかそんな事思ってるわけじゃない


それでも

やっぱり胸のざわざわが消えない

分かっていてもやっぱりつらいよ


「ねぇ、名無しさんは知らないの・・?
俺の世界で一番セクシーな顔知ってるの、名無しさんだけだって事…!」


チャンソンは私の顎を優しく掴むと目線を合わせて私を見つめた


「それに名無しさんにはあのダンサーさんよりも、もっとすごい事してるでしょ…?」


そう言われた私は身体中が熱く火照ってチャンソンの顔をまっすぐに見ていられなくなってしまった


「ほら、すぐそうやって恥ずかしがる・・」


チャンソンは横を向いた私の顔を向き直させると


「そこがまたかわいいんだけどね」


そう言って私の唇を奪った


「こんなに可愛くてセクシーな名無しさん、俺だけが知ってるなんてすごい幸せ」


そう言うとチャンソンはぎゅっと私を抱きしめた


「名無しさんもそうでしょ…?」


チャンソンの温かいぬくもりがとげとげの私の心を溶かしてゆく


誰かを好きになる時、必ずしも楽しい事ばっかりがあるわけじゃない

いや、むしろその逆かもしれない

誰かを好きになればなるほど、不安と孤独がついてまわって苦しくなる

それでも誰かを好きにならずにいられないのはきっとこんな瞬間のためなんだ


愛する人のぬくもりに包まれて
幸せを分かち合うこの瞬間にこそ愛は育まれていくと思うから


だから

また私の心がとげとげになって胸が痛くなる事があったなら

その時はあなたのすべてで私を溶かして


そうすれば明日の私はきっと

あなたに負けないくらいの元気な私に戻れるから・・・!




〜END〜

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