BOOK
□君が憎い
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君が憎い
君なしでは生きられない
こんな私にした君が憎い
色のなかった私の世界を
虹色に変えてくれた
君に出会えたこの世界を
愛おしく思えた
だけど
君なしでは生きられないこの身体は
いつだって悲鳴をあげてる
君に会いたい
君に触れたい
君を全身で感じたい
君の心の中を覗き見したい
私をまだ想ってくれているのなら
まだ少しでも君の心の中に私がいるのなら
神様、どうか私の願いを叶えて
昔みたいにそのドアの向こうから優しい笑顔で私を迎えに来て
そして私のすべてを満たして
私の祈りにタイミング良く玄関のベルが鳴った
神様…!!
思わず急ぎ足で玄関へと駆け寄る
どうか願いを叶えて…!!
祈るような気持ちでドアを開く
「突然ごめん…」
そこにはバツが悪そうに私を見つめるチャンソンがいた
ああ…やっぱり
私の願いは届かない
私の声は神様には聞こえないのかもしれない
「どうしたの…?」
よく見るとチャンソンの服は雨に濡れてその色をより濃く映し出していた
髪の毛からはいくつもの雫が滴り落ちている
「どうしたの…?こんなに濡れて…!早く入って」
私は急いでチャンソンを家の中へと招き入れた
チャンソンは一瞬困惑したような顔をしていたけれど私は有無を言わせなかった
「風邪でもひいたらどうするの…!!」
バスタオルをチャンソンの頭にかぶせてゴシゴシと拭いているとチャンソンの冷たい頬に触れて私は驚いた
「こんなに冷えきって…!」
私は両手でチャンソンの頬を挟んだ
「チャンソン、何考えてるの…!風邪でもひいたら…!」
「怒らないで…」
私の言葉を遮ってそう小さく呟くとチャンソンはきつく私を抱きしめた
「バカな事してるって…自分が一番よく分かってる…
だから怒らないで…」
私を抱きしめるチャンソンの肩が小さく震えている
「名無しさんの願いを叶えてあげられなくてごめん…
俺で…ごめん…」
きっと
チャンソンは私と同じなのかもしれない
報われない想いに身を焦がす辛さを知ってる
願っても叶わない想いがある事を知ってる
眠れない夜がどれだけ長くて苦しいか
チャンソンは知ってるんだ
「チャンソン…」
私はそれ以上何も言わずにチャンソンの冷たく冷えた唇に強く自分の唇を押し当てた
その瞬間、チャンソンは小さく身体を震わせると深く唇を重ね合わせた
冷たかったチャンソンの唇が氷が溶けるようにゆっくりと熱を取り戻してゆく
互いの境界線が分からなくなる程熱くなった私達の唇はいつまでも互いのぬくもりを求め貪り合う
「このまま…暖めあおうか…」
私は小さく呟いた