BOOK

□僕だけのもの
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いつだったか…名無しさんは言ったね


僕の心は硝子細工のようだって

触れたら壊れてしまいそうなほど儚げで、でも目をそらせないほど美しいって


もし僕の心が硝子細工なら名無しさんの心は柔らかい沢山の羽根で作られた毛布みたいだ

真っ白で暖かくて優しく包み込んでくれる


名無しさん、僕はもうそのぬくもりから離れることなんて出来なくなってしまったんだ


仕事で疲れた時

辛い事があった時

嬉しい事があった時

いつだって思い浮かべるのは名無しさんの事ばかり


会いたいよ…名無しさん

今すぐにでも名無しさんに会いに行きたい


名無しさんの髪に触れて

思い切り抱き締めて

名無しさんのぬくもりをこの身体全部で感じたい

だけど

こんな真夜中に会いたいだなんて

言えない

いつも僕に合わせて我慢させてばかりなのに

これ以上わがままなんて言いたくない


名無しさんが誰よりも大切だから

ずっと一緒にいたいから

大切にしたいんだ


突然の聞き慣れた機械音が響き渡る

ほんの少しだけ胸を高鳴らせながら僕は携帯を手にした


「チャンソン…?寝てた…?」


愛しい名無しさんの甘い声に僕の鼓動は激しさを増す


「ううん…起きてた」

「何してた…?」


「名無しさんの事ずーっと考えてた」


すると携帯越しから名無しさんのくすぐったい笑い声が聞こえた


「そうだと思ってかけたの」


そう言いながらクスクスと笑う


「名無しさん…会いたいよ…」


僕は携帯を強く握り締めると思わず口から滑り出してしまった


「あ、いや…今すぐってわけじゃなくてっ…」


動揺してる僕の心を見透かすように名無しさんは
クスクスと笑った


「私は今すぐにでも会いたいのに…チャンソンは私に会いたくないの…?」


名無しさんの甘く優しい声がますます僕の胸を切なく締め付ける


「そんな事ないよ…!僕だって本当は今すぐ会いたい…!」

「じゃあ…今すぐ鍵開けて…?」


「えっ…?」


僕は思わず玄関に視線を向けると急いで駆け寄った

心臓が痛い位に鳴り響いてどうにかなってしまいそうだ


半信半疑で扉を開くとそこには本当に

僕の大好きな名無しさんがいた…
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