BOOK

□Between the sheets Part2
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今日はまるで春のように暖かい1日だった


私は久しぶりに布団を干し、シーツを洗濯した


干した布団からはたくさんのお日様のにおい

洗ったばかりのシーツからはお日様と柔軟剤のにおいがした


私はふかふかの布団に顔をうずめると深く身体を沈めた


目を閉じると胸の上に手を置いてそっと指でなぞった


そこは前にチャンソンがつけたあざがあった場所


私は懐かしむように指でもう一度なぞった


おそろいでつけたあざもとっくのとうに消えてなくなっていた

それと同時にチャンソンの感触も温度も少しずつ私の身体から消えていった



あの日から再び彼等が日本にやって来ていた事は知っていた

チャンソンを呼び出そうと携帯を握りしめた事も何度もあった

けれどそのたびにチャンソンの笑顔を思い出しては思いとどまった



きっと目がまわるほど忙しい日々を送っている彼は…

私の事などとっくに忘れているに違いない



そう思っていた

むしろ、その方がいいとさえ思った



けれど…


もう一度深く息を吸うとお日様と柔軟剤のにおいが鼻をかすめた



私を満たしてくれるのはお日様と柔軟剤のにおいじゃない


そう思った瞬間

突き動かされるように私の足は歩き出していた



そこはチャンソンといつも会っていたホテル


私は久しぶりにその扉を開いた


たった3ヶ月前の事なのにとても懐かしく感じてしまう


ゆっくりと部屋を見渡しながら私は中へと進んだ

いつもここから眺めていた窓からの景色は変わらずそこにあって、私は少しほっとした


ベッドの端に座ってシーツに触れるとチャンソンとの日々を鮮明に思い出して私の胸を締め付けた


今にも声が聞こえそうな気がした私は思わず振り返った


私…

何してるんだろう…



果てしなく途方に暮れていたその時、携帯が鳴り響き私は慌てた


「もしもし…はい」

「今日…?」

「分かったわ…6時にいつものレストランで」



電話を切ると私は振り返る事なく部屋をあとにしたのだった
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