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□君が憎い
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小さく呟くと私はまたチャンソンのぬくもりを求めた

チャンソンの唇から切ない程の想いが溢れ出して私の胸を熱くする



チャンソン…ごめんね…

私…最低だね


チャンソンの気持ちを知っててこんな事するような女…

チャンソンには似合わない

私の気持ちを知ってるチャンソンにこんな事させるような女…


さっさと忘れた方がいい



でも私とチャンソンは

乗り越えられない夜の痛みを知ってる者同士だから


この夜だけは
一人では超えてゆけない事を知っているから


今日だけは互いのぬくもりを感じながら夜を超えてゆきたい


「名無しさん…!」


乱れる息遣いで私の名を呼ぶチャンソンの眼差しが時を止める

今この世界には私達二人しかいない

そんな魔法をかけられてしまった


「チャンソン…!」


二人の混ざり合った汗が私達に濃密に絡みつく

ひとりじゃないと強く感じながらこの快楽を共有してゆく


これこそが本当の快感


「私を…嫌いって言ってよ…!」


チャンソンの温度を全身で感じながら満たされてゆく自分が分かる


「憎い…名無しさんが憎いよ…!

でも、それでも…嫌いになんてなれるはずない…

愛してるんだ…!!」


チャンソンが深く私の中を突き抜けると大きな身体を私に委ねた


「ごめんね…チャンソン…ごめん…」


何度もチャンソンの柔らかい髪を撫でながら懺悔する


「許さない…
いつか…この身体も心も俺のものにするまで…ずっと許さないから」


チャンソンは切なく瞳を揺らすと私の唇を激しく貪った



大丈夫

まだまだ夜は長いから


闇夜が私達二人を包むなら

雨音が私達二人の音を消してくれるのなら


いつまでもこうして二人ぬくもりに埋もれていよう


だってチャンソンのぬくもりをこの身体に記憶させたい

夢だったと思いたくない


だってやっとチャンソンを知り始めたばかりなのだから



だから


私を嫌って

私を憎んで



そしていつまでも

私を愛していて


いつか私が君を憎む程愛すその日まで…




〜END〜
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