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□第一ボタンの主
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「こんなに鍛え上げられた身体なのに…見せない方が変だってみんな思ってるよ?」


私はチャンソンの厚く盛り上がった胸の筋肉に指を沿わせた

固く波打つ腹筋の感覚を記憶させる様に指先でなぞる


「それにチャンソンだって」


そう言うとチャンソンは半ば強引に私を抱きしめた

熱を帯びたチャンソンの熱い素肌の感触が私のすべてを奪う

抵抗する力も

考える力さえも奪って

何もかもが真っ白になってしまう


「どうしたら名無しさんの不安を拭い去ってあげられる…?」


苦しそうに少しくぐもった声でチャンソンは更に私をきつく抱きしめる


違う

不安なんじゃない

嫉妬でもない

寂しいわけでもない


だけど

自分でも分からないこの気持ちを持て余してしまっているだけ


「ごめん…私本当はこんな面倒くさい女じゃないから…」


私は素早くチャンソンの腕の中から抜け出した


だって自分でも分からないこんな気持ち

チャンソンに押し付けていいわけない


「名無しさん…こっち向いて…?」


うつむいていた顔を恐る恐る持ち上げるとチャンソンはボタンの着け終わったシャツを羽織っていた


私の目をじっと見つめながらチャンソンは下からひとつずつボタンをはめていく

最後の第一ボタンを少し窮屈そうにはめると私の唇に熱いぬくもりを残した


「ボタン外して…?」


上気させた頬を近づけて私の腰を強く引き寄せると小さく囁いた


「この第一ボタンを外す事が出来るのは…この世界中で名無しさんだけだよ…」


その瞬間私達はどちらともなく唇を深く重ね合わせていた


いつもそう

チャンソンはいつも私の気持ちを私以上に理解してくれる

こんな面倒くさい私をいつも全力で救ってくれて精一杯愛してくれるね


もっと

もっと

あなたが欲しい


長い長いキスから離れてもまたすぐにチャンソンが欲しくなる


どうしよう…



こんなにあなたを好きになってもいいの…?



「俺は仕事中はセクシー担当らしいけど、プライベートでは名無しさんだけのセクシー担当だからね…?」


そう言っていたずらっぽく笑うと妖しく瞳を揺らした


「プライベートのセクシー担当はヒョン達がいるしね…!

でも…

名無しさんはオンもオフも…明日もあさっても、ずっと俺だけのセクシー担当じゃなきゃダメだからね…?」


私の大好きな笑顔で

クラクラするほどまぶしい笑顔で

私を虜にする



もう…

隠せないよ


こんなにもあなたを愛している事


何よりも誰よりもあなたを求めてる事

世界中のみんなに教えてあげたい


私がどれだけあなたを愛しているのかを

あなたに出会えた奇跡を



でもそれを知っているのは

この世の中で私だけ


あなたの第一ボタンを外す事の出来る私だけ


そう

それだけで


私にはもったいないくらいの奇跡



〜END〜
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