BOOK

□君のいる世界
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「もっと見せてよ」


はだけた胸元に唇を沿わせて着崩れた服をゆっくりと脱がす


「ん…いや…」


身悶えして抵抗するとそんな私を見てチャンソンは


「そんな風に恥ずかしがる名無しさんの顔、最高」


そう言って妖しく笑うと少し乱暴に私をベッドへ押し倒した

チャンソンの重みが心地良い快感へと変わって私をさらに昂せる


私は思い切り手を伸ばしてチャンソンの背中を抱きしめた

大きくて広くて暖かい私の大好きな背中


「もう我慢できないの・・?」


そう言って私の中をゆっくりと刺激した指が淫らな音を出す


「お願い・・チャン・・ソン、もう・・我慢できない…!」


声にならない声で首を振りながら身をよじる私にさらにチャンソンは囁く


「まだダメだよ・・
もっともっと俺が欲しくなるまで我慢して」


そう言うとチャンソンは熱くなった舌と指先で私を弄んだ


ねえ、チャンソン

あなたは今何を想っているの?
あなたの瞳に私は映っているの?

聞きたい事はたくさんあるのにそれが出来ない

今はただこの瞬間に感じるチャンソンのすべてを受け止める事しか出来ない

今この瞬間のぬくもりだけは夢じゃないって信じられるから


「もう…我慢できないよ…!」


私は泣きながらチャンソンの腕をつかんだ
チャンソンの固く引き締まった腕に私の爪跡がくっきりと浮かび上がる
するとチャンソンは何も言わずに深く口づけを交わしゆっくりと私の中に深く身体を沈めた

身体の隅々の細胞が目を覚ますような そんな深い快感に飲み込まれて私は意識が遠くなるのを感じた


「お楽しみはこれからでしょ…?」


チャンソンは荒い息遣いで耳元で囁くと小さく笑った


この小さな部屋には私とチャンソンの二人だけ
こんなにもみだらな私達を知っているのも私達二人だけ

そんな優越感がさらに私の身体を快感で溢れさせた

けれどそれは一瞬にして一本の電話によって引き裂かれてしまった

その音は一瞬にして私を現実へと引き戻した

こんな時間にかけてくる人なんているはずないのに
そう思うと一瞬不安がよぎる


「電話…が…」


私の携帯の呼出音が部屋中に響く



「放っておけよ」


荒々しく身体を抱き起こして、中断する気なんてないと言わんばかりに強く私の腰を引き寄せた


「でも…」


あともう少しで携帯に手が届きそうな所でチャンソンに先に取られてしまった


「そんなに気になる相手…?」


チャンソンは不機嫌さを隠すそぶりなど少しも見せずに携帯を見せつけた


「そんなんじゃ…」


実際本当に相手の見当なんてつかなかったけれど考えている最中にも呼出音は鳴り続ける


「じゃあ今すぐ出て」


そう言って有無を言わせずに携帯を渡した


「はい…」


恐る恐る出ると聞き覚えのある懐かしい声がした

それは私が昔愛した人だった

けれど懐かしい声にひたる余裕もなく私の身体には次から次へと快感が押し寄せる

携帯を持つのもままならないほど私をいじめて我慢している私の反応を楽しんでいる


「ごめん…なさ…い…また…後で…っ…‼」


思わず出そうになる喘ぎ声を必死に抑えながら一方的にそう言って私は急いで電話を切った


「ひど…い…!」


私は息も絶え絶えに訴えるとチャンソンは静かに笑った


「やめないでって訴えたの、名無しさんの方でしょ…?」

「なんで、私がっ…!」


私は少し憤りを見せながらチャンソンをにらんだ


「だって、ほら…今だって俺を離さないでこんなに欲しがってるよ…?」


チャンソンはそう言って小さく微笑むと深く深く私の唇を奪った

その途端、私の全身から力が抜けた

だってそれは紛れもない真実だから
どんなウソもごまかしもきかない真実なのだから

だから
私はチャンソンには敵わない

私はチャンソンを失ったら生きていけない

私にはチャンソンしかいない

ただそれだけ

だからこうして今日も私は繰り返す

幸せな夜の後にやってくる切なくて苦しい朝がやってくると分かっていても…
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