5月4日の新一クン!
□クローバー
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『5がつ2にち』
「あっと2日〜♪」
「ん? どうしたんだ?らん。 明後日、何かあんのか?」
「わぁ!!新一!? べ、べつになにもないよ?」
「?」
〜〜〜〜クローバー〜〜〜〜〜
新一の母、有希子が蘭に計画を持ちかけたのはいまから一週間前のことだった。
『ねえ、蘭ちゃん。ゴールデンウィークの5月4日、何か予定ある?』
『ううん。 4日はしんいち、サッカーするって。 だかららん、よていないよ?』
『ふふ。 そっか〜、”しんいち遊べないから予定ない”っかぁ〜。』
『? なぁに?』
『ううん、なんでもない! ねえ蘭ちゃん!4日予定ないんだったらうちに遊びに来ない?』
『え? しんいちのおうち? でも、しんいちいないんじゃないんですか?』
『ええ。午前中は、ね。 午後には帰るようにいってあるの。 それより蘭ちゃん、5月4日が何の日か知ってる?』
『う〜ん。 ・・・おやすみのひ?』
『ふふ。 まあそうなんだけど(笑) 新ちゃんに関係があるんだけどね〜』
『ウ~~ン・・・ あ! おたんじょうびだ!! 5がつ4にちってしんいちのお誕生日だ!』
『ピンポ〜ン!! それでね、パーティーしようと思ってるんだけど、来てくれる?お昼頃から。』
『パーティー?』
『そう。 ケーキ食べたり、歌をうたったり。 部屋もかわいく飾り付けて。』
『わぁ〜、楽しそう!! あ!、午前中から行ってもいいですか? 準備、するんでしょ? らんにも手伝わせて!!』
『あら!ありがとう。じゃあ、10時くらいに来られる?』
『はい!!』
『あ、でもね、蘭ちゃん。実はこのことは新一には秘密にしてほしいの。』
『パーティーすること?』
『そう。新ちゃんったら、すーかり忘れちゃってるみたいなのよねぇ、自分の誕生日。』
『え!? しんいちがですか?』
『うん。だから秘密に準備して、新一を驚かせない?』
『うわぁ〜、たのしそう!』
『それじゃ、蘭ちゃん。このことは、新一にはシーよ?』
『うん。シーだね!』
(あさってはしんいちのお誕生日パーティー♪ たっのしみだな〜)
「♪フンッフン〜♪」
♪〜〜♪〜〜
「何だよ、らん? 鼻歌なんか歌ってさ!! 何かいいことあんのか〜?」
「うん!だってあさっては〜・・・ あ。」
「あさって〜? なんかあったっけか〜?」
「う、ううん。なんでもないよ!なんでも!!」
「?」
(いけない、いけない!! シー、なんだった!!)
秘密だ、とは思っていても楽しみすぎてついついいいそうになっちゃう蘭。
「それじゃあしんいち! またね!」
「おう!じゃーな、らん」
気がつくといつもの分かれ道に来ていたため、2人は別れた。
「たっだいまぁ〜!」
「ああ、お帰り。 ん?どうした蘭? 何かいいことでもあったのかぁ?」
「なんでもないよ、お父さん!」
小五郎にまで気づかれるほど、蘭の気分は最高だった。
小五郎が、なんだか不思議そうな顔をしている中、蘭は部屋からクレヨンと色鉛筆、それに画用紙を持ってきた。
「何やるんだよ、蘭?」
「やー、お父さんは見ちゃだめ!! ひみつなの〜!!」
「なんだよ。」
ふてくされた小五郎がデスクに戻り、いつも通り新聞を読み出すと、蘭は画用紙に学校で習ったばかりの漢字と、ひらがなを混ぜて、新一に向けた手紙を書いた。 一番下には絵も一緒に書いた。
「ねぇねぇ、お父さん。 かわいいふくろ、持ってなぁい?」
手紙を書き終えた蘭は、唐突に小五郎に話しかけた。
「あん? ふくろ〜? 何だよ、何に使うんだよ?」
「ひみつー ねえ、なあい?」
「あ〜、確か台所に前貰ったお菓子の袋があったと思うぞ。 何に使うかしらねーが、割とかわいかったと思うぞ!」
「わ〜い!! ありがとう!」
蘭は喜んで台所へ駆けていくと、にっこり笑顔でかわいい袋を持ってきた。
それは、最近近所にオープンしたケーキショップので、かわいらしいピンク色をしていた。
その中に蘭はさっき書いた手紙と、ランドセルから取り出したあるモノを入れた。
それは押し花になった4つ葉のクローバーだった。
蘭がそれを見つけたのは偶然だった。
一週間前、有希子に新一の誕生日を聞いた帰り、蘭が新一へのプレゼントを何にするか悩みながら歩いていると、フッとクローバーが目に入った。
「あ、クローバー! 葉っぱが4つの、無いかな〜」
『幸せを運んでくる』『持っていると幸せになれる』という4つ葉のクローバー。
蘭も今まで何度も探したことがあったけれど、まだ一度も見つけたことはなかった。
(無いのかなぁ〜? あったら新一にあげたいな!)
もう家に帰らないといけない時間だったけれど、蘭は
(ちょっとだけだもん!)
と、クローバーを探し出しました。
「あ、あったぁ!」
驚くことに、今まで一度も見つけられなかったそれが、今日は3分ほどで見つかりました。
早速蘭は、そのクローバーを持ち帰ると、母親の英理に電話をして、クロ−バーを枯れさせない方法を聞きました。
『それなら、押し花にしたらどうかしら?』
英理のアドバイスで、蘭はすぐさまクローバーを押し花にして、きれいに出来上がると『プレゼントはこれにしよう!』と決めたのでした。
(しんいち、喜んでくれるかなぁ。驚くかな?)
誕生日パーティーまで、蘭はずっとうきうきしっぱなしだった。
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誕生日パーティー当日――――
「しんいち、お誕生日おめでとう!」
パァァン パンパン
蘭と、有希子が部屋をかわいく飾り付け、テーブルには新一の好物と、お菓子と、『新ちゃんお誕生日おめでとう』と書かれたチョコの乗ったケーキを置いて。
ちょうど準備が終わったところで、新一が帰ってきた。
リビングの扉を新一が開けて、部屋に入ったと同時に、蘭、有希子、それに新一の父親の優作はクラッカーを鳴らして新一を出迎えた。
「えっ? きょ、今日って・・・」
「しんいち、お誕生日だよ!! ほんとに忘れてたんだ〜!!」
「あ!?」
「新一。今日から、7歳だぞ!」
「まぁったくもう!新ちゃんったら! ほら、パーティにしましょ!」
「パーティー? あ!うっわ〜うまそ!! 俺の好きなものばっかり!」
「そうだよ!しんいち。 今日は新一のお誕生日だもん!」
「らんも準備してくれたのか?」
「そうだよ!一週間前から!」
「あ!! それでか。らん、一週間前からなんか隠してると思ったら。 これだったのか!」
「うん! ねぇ、しんいち。おどろいた?」
「ま、まぁ、な!!」
「えへへ。 ねぇ、もっと驚かしてあげる!」
はいっと蘭は2日前から準備していたプレゼントを新一に渡した。
「これ・・・。 もしかしてプレゼント?」
「うん!」
「サンキュー、らん!」
「ねえ、あけてみて!」
「いまか?」
「うん!」
蘭にせかされながら新一が袋を開けると中から出てきたのは、
「これ、4つ葉のクローバー!?」
「そうだよ!!」
「え!? いいのか?俺が貰って。 らん、ずっと欲しかったんじゃ・・・」
「いいの!! しんいちがずうっと幸せでありますように!!」
そう言った蘭は新一の頬に・・・
チュッ
「ら、らん!?」
ほっぺにキス。
「あら、しんちゃんったら!」
「おや?新一も隅に置けないね?」
「う、うるせー!!」
真っ赤になって慌ててながらも、うれしくてしょうがない新一と、
「えへへ!」
同じように真っ赤になって照れながらも、どこか満足そうな蘭。
「さあ、ケーキとか、食べましょ!」
有希子の一声で、テーブルへと向かう4人。
すっごくからかわれたけれど、とっても楽しいい誕生パーティーを過ごした新一でした。
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☆おまけ☆
『しんいち、おたんじょう日、おめでとう。
7さい、おめでとう!
これからも、ずっとずっとなかよしだよ!
らん、しんいちのこと、だーいすき!!
』
「だって。 よかったわね〜、し〜んちゃん!」
「−う、うるせー!!」
「全く。ポーカーフェイスがなってないぞ、新一。」
「真っ赤になっちゃって〜、かわいいvvv」
「ほ、ほっとけ!!」
蘭が帰った後、蘭に貰った手紙を開いた新一はさらに両親にからかわれたそうな。
ちなみに、大人になってから大切に保管していた手紙と4つ葉を見つけられ、また盛大にからかわれたのは、また別のお話!