恋すてふ♪

□三.詩
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急いで待ち合わせ場所に向かったものの、そこに原田の姿はなかった。


(遅かった!?)


そして、慌てて母のところへ駆けた。


「母様っ」

「どうしたん? そんなに慌てて」

「新選組の方たちは!?」

「えー? 先程、お帰りになったわよ」


その言葉に、加子は衝撃を受けた。
やはり遅かったか。落ち込む姿に、母は首を傾げた。


「本当に、どうかしたん? 新選組の人にでも、用があったん?」


母の疑問。言葉に詰まる加子は、濁した。
そこへ、加子の父が姿を現した。


「なぁ、これから来るお客様のことなんじゃが……って、加子。どうかしたんか?」

「貴方。実は、加子が先程お帰りになった新選組の方に用があったみたいで」

「何?」


父は、顔を顰めた。


「女が、男に用があるなんて怪しからん! 一体、何の用だったんだ、加子!」

「っ」

「ちょ、貴方。落ち着いて」


怒鳴る父に、加子は身を引いた。その様子に父は、ますます激怒する。


「え!? 言えないのか!? まさか、言えないような関係なんか!?」

「ち、違いますっ! た、大したことではないので……」

「じゃったら、何で帰られたお客様のことを聞くんだ!?」


泣きそうな顔を見せる加子に、母が宥めにかかる。そして、父は納得がいかないようだったが渋々、身を翻す。


「あぁ、そうだ。加子、あの辞退の文はもう出したんか?」


ふと、父が思い出したように振り返った。
母も、気になるといった様子で見遣る。


「あ、まだです」

「何をやってるんだ。はよ、出せと言ったじゃろ!」

「す、すみませんっ。今から出してきます……」


加子は、肩を落として外に出た。
懐で、文と詩がさ迷う。






『詩』END
2012年6月1日
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