恋すてふ♪
□四.転機〜託した想い〜
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――……‥‥
燃え盛る炎の中に、原田が文を投げ込んだ。
四方から徐々に墨となる様子に、加子は目を細めた。
「もう、戻れない……」
「あぁ。けど、後悔してねぇんだろ?」
「はい。後悔は、していません」
海の香り。波の音。青い空が、清々しい気持ちにさせてくれる。
そして、原田が手を差し出した。首を傾げる加子だったが、自分の手を怖ず怖ずと差し出す。
それに対し、原田は可笑しそうに笑った。
「ちげぇよ。作品だよ。持ってんだろ?」
「え、なっ……作ひっ……えっ」
茹で蛸のように顔を赤くした加子は、思わず手で隠した。両手で顔を覆う様に、原田は「悪い」と苦笑した。
何という恥ずかしい過ち。もう帰りたい、と思いつつも作品が入った文を懐から出す。
「す、いませ……お恥ずかしい限りですっ……」
原田の手に、今度こそ作品を置く。
「見ても良いか?」
「え!? やっ、それはっ」
「駄目か?」
加子は、焦った。なぜなら、書いたのは恋の詩だから。しかも、それは淡い恋をしている目の前の男性への想い。詩なので、恋の相手が原田だと特定される表現はない。
それでも、恥ずかしかった。
「だ、駄目ですっ! その、作品集に載ったら読んでください」
目を伏せて告げる加子の頬は、桃色に染められている。口元も柔らかい笑み。
それを見た原田は、少し意地悪したくなった。