恋すてふ♪
□四.転機〜託した想い〜
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「俺に金出せってか? これでも、俺は作品を届けてやるんだぜ?」
からかうような口ぶりに、加子は
「ふふっ、ごめんなさい」
と笑った。
「しょうがねぇな。買って読んでやるよ」
「ありがとうございます」
「んじゃ、俺は行くぜ。京に帰ったら、ちゃんと届けてやる」
別れの言葉を交わし、原田は船着き場へ急いだ。
去り行く背中。最後まで手を振っていた加子は、その姿が見えなくなるとそっとため息を吐いた。
「ありがとう。原田さん……」
潮の風に紛れて、声が聞こえた気がした。
もう二度と会うことはないだろう。だから、買って読んで下さいと告げた。
伝えられない想いを、どうか読み取って欲しいと願う。
『転機〜託した想い〜』END
2012年6月3日