恋すてふ♪

□五.葛飾岱斎先生
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そして、ほっとしたように口を開いた。


「良かった。作品が届かないから、辞退するのかと思っていました。なんせ、彼女の作品は人気がありますからね。載らないと文句を言う読者もいるんですよ」


原田は、なぜか永倉の顔が浮かんだ。


「読みます? 持ってきて下さったお礼です」

「……いや、詩集に載るまで読まないって約束したからな」

「では、買ってください」


あっさりと言う岱斎に、原田は苦笑して「そうする」と頷いた。

しかし、岱斎は


「嘘ですよ。貴方には特別、無料で差し上げます。持ってきて下さったお礼ですから」


と気前の良さを表した。
原田は、流石に無料で貰うのはと気が引ける思いだった。

それを指摘すれば、岱斎は原田のことを「男らしい!」と称した。
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