恋すてふ♪
□十一.朗報
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文を出して数日、原田からの返事を待たずして家族三人は家を出た。
内陸部を通って目的の京まで向かった。
そして、幾日かして京に着いた時には疲れも和らいでいた。というのも、自分達が住む環境とはまた違う雰囲気。都というだけあって、京の賑わいは新鮮なものを感じたからだ。
一行は早速、研修先の旅館へと向かった。
(ここが京……。原田さんがいる場所……)
加子は京へ行くと決まった日から、道中ずっと原田のことを考えていた。
原田が済む京はどんなところなのか。京から宮島、宮島から京への旅路どんな景色を見たのか。
はしたないと、自分で思いながらもどうしても考えてしまっていた。
広い京で会うのは難しいこと。それも分かっていたが、もしかしたらという期待は加子に挙動不審のような行動をとらせた。
あまりにもきょろきょろと当たりを見回すので、父や母に注意されたのであった。
「お待ちしておりました」
「どうも、これから短い間ですがお世話になります。宜しくお願いします」
旅館の主人は京独特の発音で、家族を迎えた。
「ささ、まずは荷物を置きましょ。こちらになります」
案内されたのは客間とは少し離れたところにある一室だった。
「このお部屋は襖で仕切られた二部屋になっております。就寝のさいに活用して下さい。……今日はお疲れでしょうから明日から研修にします?」
「あ、いえ。そちらさえ宜しければすぐにでも始めていただきとうございます。なにぶん、息子二人に旅館を任せて出てきたもんですから、心配で心配で」
「さよですか。ほんなら、夕刻……あと半刻後から始めましょか。それまで少しでも疲れを取っといて下さい。びしびし行きますで!」
笑顔で部屋を出て行った主人に、身震いをした三人であった。