恋すてふ♪

□十一.朗報
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「まずい……」


案の定というべきか、加子は迷った。

京の地形は似たようなところが多く、通りを間違えることだってある。地図を見ても加子は自分の現在地が分からなかった。


「ここどこ……?」


目の前には、小間物屋があるが地図には目印が所々にしかない。
ここがどこの通りなのか、どこの小間物屋か――皆目見当がつかなかった。


「どうしよう、日が暮れてしまう」


地図を逆さにしてみるが、形が変わらない。加子は、適当に歩いて見ることにした。
もしかしたら橋が見えるかもしれない。そう思ったのだ。橋さえ見つければ地図と照らし合わせ確認できる。足早に歩いた。




一方、京の大通りを歩いていたのは他でもない。巡察中の原田であった。
いつものように巡察の道を通り、終わりを向かえていた。隊士に解散を指示し、自分はある店に入った。新選組の隊服を着ているので、店主は少し怯えていたが客として来たのだと分かると意を決して原田に声をかける。


「何か、お探しで?」

「え、あぁ。干し柿あるか?」

「干し柿ですか? それならこちらに……」


目当ての干し柿を購入し、原田は店を出る。すると、視界に明らかに困っている女が目に入った。


「あれは……!」


瞬間、原田の心臓が跳ねた。

少し遠いが分かる。あれは、加子だと。
実は今朝方、原田に加子からの文が届いていたのだ。まさか会えるとは思っていなかった。

原田は迷わず近づいて行った。


「あれー? 橋がないっ、どうしよう」

「……困ってんのか?」

「!」


一瞬、ドキッとしたが加子にはその声に聞き覚えがあった。
心臓が高鳴る。そして、振り返ると――そこには見知った男がいたのだった。






『朗報』END
2012年9月25日
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