恋すてふ♪

□十三.夜の都
3ページ/4ページ

「ねぇ、ぶち壊して悪いんだけどさ。終わったよ」


気付けば、連れ込まれた物陰の入り口に人影。思わず加子は原田の後ろに身を隠した。


「え、何? 嫌われた?」

「馬鹿。総司、お前月明かりで顔が怖いぜ。……加子、大丈夫だから」


そう指摘され、加子を前に出す原田。人影は、同じ新選組の沖田総司であった。


「左之さん、その子……」


沖田も覚えていたらしい。


「何だ、総司。知り合いか?」


そう発したのは、沖田の背後から現れた男。斎藤一であった。


「ん、確か宮島で泊まった旅館の娘さん、だったよね?」

「はい……松原加子と申します。その節はお泊り下さってありがとうございました」

「なるほど。では何故、安芸にいるはずの者がここにいる」


斎藤の鋭い視線と言葉に、その場が張りつめた。


「確かに、不思議だよねぇ。斬っちゃう?」

「!」

「総司、そんな冗談言うんじゃねぇよ。怖がってるだろうが」


笑顔の沖田は本気で斬るつもりだったのか冗談なのか、その場の者はよく分からなかった。


「ごめん、ごめん。でも左之さん、この子が京にいること知ってたんでしょ?」

「本当か、左之」

「……前に、会ったんだよ」


その言葉に「へぇ」と沖田が目を細める。


「旅館の研修でこっちに出てきたらしい」

「本当?」

「はい。本当です」

「……なら良いんだけど。それよりも、見た?」


沖田の問い詰めるような視線。緊張感が走る。

しかし加子には何のことかさっぱりだった。
首を傾げる加子に、すかさず原田が口を挟む。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ