恋すてふ♪
□十三.夜の都
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「ねぇ、ぶち壊して悪いんだけどさ。終わったよ」
気付けば、連れ込まれた物陰の入り口に人影。思わず加子は原田の後ろに身を隠した。
「え、何? 嫌われた?」
「馬鹿。総司、お前月明かりで顔が怖いぜ。……加子、大丈夫だから」
そう指摘され、加子を前に出す原田。人影は、同じ新選組の沖田総司であった。
「左之さん、その子……」
沖田も覚えていたらしい。
「何だ、総司。知り合いか?」
そう発したのは、沖田の背後から現れた男。斎藤一であった。
「ん、確か宮島で泊まった旅館の娘さん、だったよね?」
「はい……松原加子と申します。その節はお泊り下さってありがとうございました」
「なるほど。では何故、安芸にいるはずの者がここにいる」
斎藤の鋭い視線と言葉に、その場が張りつめた。
「確かに、不思議だよねぇ。斬っちゃう?」
「!」
「総司、そんな冗談言うんじゃねぇよ。怖がってるだろうが」
笑顔の沖田は本気で斬るつもりだったのか冗談なのか、その場の者はよく分からなかった。
「ごめん、ごめん。でも左之さん、この子が京にいること知ってたんでしょ?」
「本当か、左之」
「……前に、会ったんだよ」
その言葉に「へぇ」と沖田が目を細める。
「旅館の研修でこっちに出てきたらしい」
「本当?」
「はい。本当です」
「……なら良いんだけど。それよりも、見た?」
沖田の問い詰めるような視線。緊張感が走る。
しかし加子には何のことかさっぱりだった。
首を傾げる加子に、すかさず原田が口を挟む。