恋すてふ♪

□瓦版騒動
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「で、今度はどこに何を売るつもりなんだ? そんな情報欲しがるやつは怪しいぜ」

「それは言えねぇ。こっちは金さえ手に入れば良いしどこだろうと気にしねぇ――いってぇ!!!! なにすんだ!!」

「ふざけんなよ! 金のために女を付け回し、怖がらすなんざ、最低だな! それが俺の女ときたらはいそうですかって許すわけねぇだろ!」

「最低って言われも、それが需要があるんだから俺みたいなのが存在するんだ。名が売れるってことはそういうことなんじゃねぇのか? 誰もが気になるだろ。有名人の個人的情報がよ!」

「だったら正式にこいつに話を聞くことだな。こそこそと後をつけて得た情報をどこの誰とも知らねぇやつに売ることは、俺が許さねぇ!」


そう言って原田は男を地面に投げるように離す。
男はよろめいたが転びはしなかった。


「良いか。俺たちの関係は別に隠してないし、二人でよく出かけてるから皆知ってる。そんな情報売っても大して金になるわけねぇだろ」

「け、けど今さっきこの女を路地裏に連れ込んで変な事しようとしただろ!」

「そりゃ、お前がつけて来るからだろ? 俺が狭い場所で何かしようとしたら、探ろうとして覗いてくると思ったんだよ。外でそんなことするわけねぇよ。流石に夫婦でもな」

「……は? 夫婦?」


男はてっきり恋人同士だと思っていた。しかも勝手に秘密の関係だと思い込んでいた。
一人混乱する男に原田は言い放つ。


「良いか、二度とこいつを追うんじゃねぇ。もし次に同じことしたら――」


男に近寄り、耳元で囁いた。


「生きて帰れると思うなよ」


男はその冷たい声色に身を震わせ、一目散に走り去った。


「……何て言ったの?」


加子は原田に聞いた。しかし原田は


「ん? ちょっとな……でももう大丈夫だと思うぜ。また何かありゃ言ってくれ」


とはぐらかした。
加子は気になったが、それ以上追及しても教えてくれないだろうと思い「うん」と口にするだけに止まった。


「じゃ、帰るか」


こうして瓦版騒動の幕は閉じたのである。






終わり



―――――
作中に出て来た天麩羅屋さんの蓮屋、実際にはないので宮島に訪れた際に探したりしないでくださいね!私が適当につけた名前なので。
実際あるのは別の名前の天麩羅屋さんですが、蓮屋のモデルでもなんでもないので!

あとはお気づきになられた方もいますでしょうが、原田に対して主人公が砕け口調になってますね。まぁ本編後で二人は夫婦になったんですが、主人公は家族に対して敬語じゃないですよね。
それもあってか結婚してしばらくして原田に「俺にも敬語じゃなくていいぜ。俺も畏まった言い方よりそっちの方がいい」というようなことを言われた、という裏設定です。
名前呼びも夫婦になったので原田さんから左之助さんにしました。
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