愛しい人



―― ねぇ 十代目? 俺の気持ち本当は知ってるんじゃないですか? ――


そんな問いかけで目が覚めた。 なんというか…目覚めは良くない。

俺は愛しの人にそんなことを口が裂けても聞くはずがない。 いや、聞けない、聞く勇気がない。

そんな、自分の弱さを感じながらベッドからゆっくり下りれば喉が渇いたことに気が付き怠い、なんて考えながら珈琲を飲みにキッチンへ向かった。
珈琲を探してみるものの一向に見つからないので考えてみたらある事を思い出した。
「あ〜、珈琲切れてたんだっけっか…糞。朝から何なんだよ」
小さく舌打ちをするも、珈琲が出てくるわけでもないので仕方ない、と諦めコップに水を汲めば一気飲みし朝御飯を食べる気がしなかったし時間も時間なのでコップを洗って片づければ玄関へ向かい靴を履き愛しの人に会うために、なんて考えたら元気が出た。
少し浮かれ乍もドアを開ければそこには普段いない人がいた。
「おっ、おはよう、獄寺君!」
「おはよございま…え?十代目?」
「どうしたの?そんなに驚いて」
小さく笑うあの人を俺はあの変態南国果実の幻覚や夢じゃないかと疑った。
だから、試に頬を思いっきり抓ってみた。
「ってぇ〜っ!」
「ごっ獄寺君!?いきなりなにやってるの!?」
「あ、いや、何でもないっす!」
慌てた愛しの人はとても可愛かった。
何で自分の家の前にいたのか、なんて考えも飛んで行ってしまった。

もう少し、こういう生活もいいかもしれない。

―大好きだ、愛してます、愛しの十代目―

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