君の話をしよう。 君が知らない君の話を。 とても寒い冬。音が消えた銀世界。その中で君は産まれた。外とは違う赤と橙の色に包まれた温かい部屋で君は産まれたんだ。部屋と同じ色に染まった優しい手に抱かれて、優しい笑顔が向けられて。とても愛されて。 間違いないよ。僕もそこにいたから。君の誕生の瞬間に。 彼女はとても嬉しそうに微笑んでいた。君が生まれてきたことを心から喜んでいたんだよ。でも君は直ぐに彼女の元を離れなければならなかった。 君の記憶は引き取られた家からだね。きっと今まで酷い扱いを受けたんだろうね。そんなにも人を恨んでいるなんて。服も汚れてぼろぼろだ。頬も髪も。あんなにも綺麗だったのに……。後でちゃんと綺麗にしてあげるからね。 あぁ、もうすぐ着くよ。そんな顔じゃ彼女も悲しむ。 あれが彼女の家。君が生まれた家だよ。君の兄弟も皆そろってる。君を探すのが一番大変だった。随分色々探したけど、手がかりが中々見つからなくてね。色々な所に回されて、君も辛かっただろうね。でも今日からはここで兄弟と一緒に暮らすんだよ。 さぁ綺麗にして彼女に会いに行こうか。 連れて来たよ。君の最後の娘だ。やっと見つかった。これでみんなそろったよ。 君はもう僕の傍には居ないけど、君の大好きなこの丘のこの家で君の子供たちと僕は暮らすよ。人形に取り付かれた馬鹿な男だと笑われてるけどね。 風が出てきたね……。寒いかい? そうだね、帰ろうか。 じゃあね。また来るよ。 |