〜短編集〜
□神宿る、『冬の月』に誓いを交わす…
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闇夜の夜景は、眼下にある……。
二人の男が、それを見つめ、頭上には月のない黒い空が広がっていた…。
一族の髪色を表す…、漆黒と暗黒の……、『何色にも染まることのない』最強のダークカラー……。
空は…、過去の晴れた日の青空を映し出す。
男が、その強靭でしなやかな腕を、水平に伸ばした。地上を動き回る黒い影が段々と近付き、滑空する鷹が、男の伸ばした腕に羽音を立てて止まる。
周囲から拍手が起こり、その日の"鷹狩"のトップは一族の長……マダラであった。
弟は誇らしげな笑みを浮かべ、『凄いね』と言葉を掛ける。
そんな時代もあった……。
あの一族が現れるまでは……。
『忍世界』創世後……、雷名轟かせるは…"うちは"と"千手" ――。
幾度となく対立と交戦を繰り返しても、"あの男"を凌駕するには"力"が必要だった……。
しかし、あんなに激しい戦闘を交わして措きながら、ある日突然、一方的に休戦協定を申し入れて来る……。
マダラは、怒りをあらわにする。
『戦いに疲れた…』だと?
いったい、何のための戦いだったと言うのだ?
弟の眼を奪ったという謗(ソシ)りを一族から受け、マダラは里を出る。
あんなに持て囃しておいて、手の平を返したような冷たい態度……。
弟のいない一族に、何の未練もなかった……。
残ったものは、愛用の武器とこの眼窩に嵌まる、『弟の眼』……。
『復讐』という言葉は、甘美なる奮起への調べだった……。
しかし、挑んだ戦いは、『敗北』を喫した――。
このオレが、あの男になぜ劣るというのだ?
『力』を……
この世界を破壊する『力』を……
闇夜を走る冬の風は、冷たさを孕んで、二人の男の頬を切る……。
ただ、"うちは"の名を、守りたかっただけなのだ……。
ただ、"あの女"を、守りたかっただけなのだ……。
そのためだけに戦って、『憎しみ』だけが増幅していく……。
あの男の、子々孫々に至る者たちに復讐を――。
あの男の、子々孫々たちの、隷属となった同朋たちに復讐を――。
上空を走る風は強く速く……、雲に隠れた月が現れ、男たちの顔を照らし出した。
「あのクズどもに、醒めることのない夢を……」
右半面に傷を負った男…オビトが、怒気を籠めて言った。
「憎き男の子々孫々たちは、未来永劫『幸福な夢』を夢幻の中で視る……」
長い黒髪に覆われた男の横顔…マダラが、抑揚なく呟いた。
彼が『生』を受けた、今日この日に誓いを立てる。
"うちは最強"と謳われた、あの時代を取り戻すために……。
彼らは、最後の戦いに挑む―――。
※雪の朝にて…
2012.12.10 アカツキノ