翡翠の瞳 深紅の眼

□第2章 『朱』に交われば、紅くなる 《後編》
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 蛍灯(ホタルビ)が辺りに漂う・・・、月のさやけき晩だった・・・。
 7月下旬の夜の温度は、通常より少し寒いくらいだ・・・。
 50km四方の彼方は霧に包まれ、彼らの隠れ家を常に隠している・・・。





「ったく、イタチのヤローも、けっこう俗物だったな、オレらとヤッてるコト、変わらねぇじゃねーかァ」
「まぁ、どーせ、イタチの勝ちだろ?うん?」
「そもそも、イタチが視せた幻術ってのが、オレの気になる所だがな・・・ククッ」

「いずれにしても、イタチが勝ちゃあ・・・、オレらの『慰みもの』だ・・・・」

最後の言葉は、誰の言葉なのかは解らない・・・。






「イタチさんが勝ち・・・なら、あの類い稀なる美人は、今まで通りの" 使用人 "ですか?」

 慇懃なる声、鬼鮫が再確認する。

「あらゆる誓約を課した上、尾獣・大蛇丸の情勢に動きがあるまでの、向こう3年という契約だ。しかし、今、イタチに殺される可能性もある・・・。それは全力で阻止したいところだな・・・」


「おや?角都さんも、あの美人に、『特別な思い入れ』があるんですか?」


「契約が成立した時にでも話そう・・・、さて、主役のお出ましだ・・・」


 角都の言葉通り、『屋形』を背に月光を浴びながら、この世ならぬ者2人が近付いて来る・・・。

 片方は『狐面』を付け、艶やかな黒髪は、『箸』に似た簪(カンザシ)一本で纏められていた。


「あの、相対にして一対の『光と影』を側に置いておきたいと・・・、鬼鮫は思わないのか?」


 という言葉を残し、角都は、二人の元へ歩み寄った・・・。





「では、イタチが勝ったら、" 使用人 "としての契約続行、佳人よ貴女が勝ったら、我々の首が必要か?」

「分隊長殿に、何点か質問したあと、その返答次第では分隊長殿の『首』を頂きたい。可能ですか?」


「それはどうだろうな・・・」
と、イタチが否定気味に話す。

「オレが勝ったら、その『分隊長殿』と呼ぶのを止めて欲しい・・・」


「分隊長殿、それは出来ぬご要望です」

 狐の面の下、大胆不敵な返答だった。



「いつまで経っても、分隊長なのか・・・。ああ、そうだった、耳を・・・、術が使えなくては、心許ないでしょう」


 と言って、イタチは彼女の耳に手を伸ばした。

 びくん!

 と、彼女の肩が震える・・・。未だ、『写輪眼』の恐怖は、拭い去れないらしい・・・。

 『狐面』の下の怯える顔が、容易に想像出来る・・・。その面を見つめて、暗部での思い出に浸る余裕などなかった・・・。



 ピアスを角都に預け、月光の下、二人は対峙した・・・。











 
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