小さな光達
□非日常のその後 その2
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非日常のその後 その2
*アイカ視点
トキアちゃんがお見舞いをしてくれる日々の中で、珍しくトキアちゃんが来なかった。
まだかなぁ、なんて待ってたら扉が開く音がした。
「アイカお姉ちゃん……入って、いい…?」
今日はアイチが来てくれたみたい。
扉の影からオドオドしてるのが想像出来ちゃう。
『クスクス……うん、いいよ。入っておいで』
てこてこと歩いてくる音が聞こえる。
暫くすると、遠慮がちにアイチが私の手を握ってきた。
「あの…お姉ちゃんは、もう…見えない…の?」
きっと、目に涙を溜めながら私の顔を見てるんだろうなぁ。
私はそっと、アイチの手を握った。
『うん、そうだね……。もう、私の目は見えないの。
……でもね、アイチ。
絶対にアイチのせいじゃ、ないからね?
…だから、もう自分を責めるのは止めてね?』
そう言うと、私の手の上に水が落ちてきた。
アイチ、泣いてるのかな?
……アイチのせいじゃないのにね。私が勝手にやったことだもん。
私はそっと手を、アイチの頭に置いてゆっくりと撫でた。
トキアちゃんがしてくれた様に。
「ヒック……ぐす……、ごめん、なさい…」
『だから、アイチのせいじゃないよ。大丈夫。だって、私はちゃんと生きてるもん。
アイチに触れることが出来るよ?
生きてるんだから、そこは喜ばなきゃ、ね?』
櫂くんもトキアちゃんも私が無事って分かったら、喜んでくれたんだから。と私が付け足すと、まだぎこちなかったけどアイチも喜んでくれた。
「ねぇ、お姉ちゃん……、ぎゅってしても、いい?」
不意に、アイチがそんなことを言った。
そういえば、私も入院しててアイチとぎゅってしてなかった。
『うん、いいよ。
……アイチ、おいで』
私が両手を広げると、そろそろとアイチが私の腕の中に収まった。
「……お姉ちゃん、あったかいね」
『うん、そうね。アイチも、温かいよ』
その日はアイチとの暖かい一日を過ごした。
私の退院は、あと数日後だった。
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