クロスシリーズ

□五色の戦士、仮面の守護
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「もう行かれるのですか?」
「ちょっと、音撃も習ってみたかったかも」
「僕はまだ、弟子を取れる程、成熟した鬼じゃありませんから」
 別れ際。
 流ノ介と茉子の言葉に、イブキは少し困ったような顔をしたが……すぐに、いつものにこやかな笑顔に戻ると、彼らに向かってそう答える。
 紆余曲折、と言う程大きなすれ違いもなかったが、彼らと共に戦えた事は大きな意味があるような気がした。
「じゃあなトドロキ。あんたの剣、忘れないぜ?」
「うちも……絶対に忘れへん。モヂカラも剣も精進して極めます」
「それが良いっす。自分も鍛えて、二人に負けないようにしておくっす!」
 千明とことはに宣言され、トドロキも負けじと宣言する。ある意味、最も気があったのは、この三人なのかも知れない。
 そして……
「俺の寿司、いつか食いに来いよ! 屋台引いて待ってるから!」
「……待ってるぞ。外道衆を打ち倒してな」
「ああ。いつか……時間がある時にでも、な」
 やたら明るい源太と、最後まで殿の威厳を崩さぬまま言い放つ丈瑠に、ヒビキは飄々とした顔で答える。
 その言葉が終わると、三人の鬼はトドロキの車に乗り込み……そして、志葉家を後にしたのであった。
 するりと現れた、銀色の幕を通って。


 こうして。六人の侍と三人の鬼はそれぞれの日常に戻った。侍達は外道衆との戦いに備え更に日々の鍛錬に励み、鬼達は魔化魍との戦いのために己を鍛える事を怠らなかった。
 シンケンジャーは、ことはの笛の音を聞く度に、音の力で戦う鬼達を思い出し。
 鬼達は古文書の書を見る度に、文字の力で戦う侍を思い出す。
 何故、あの時アヤカシが魔化魍の力を手に入れたのかは分からず終いであったが……それでも、彼らは己が敵と真っ直ぐに向かい合い、戦い続けるだろう。
 例えその先に、どのような困難が待ち受けていたとしても。
 ともあれ、西暦二〇〇九年。シンケンジャーと響鬼編、ひとまずこれにて。


「残念だったでありんすなぁ、爪牙たん」
 先の見えぬ闇の中、一人たそがれるアヤカシ……爪牙に向かって、一人の女が声をかけた。
 銀色の、どこかメタリックな印象を持たせる服。どことなく着物のような印象を受けるが、実際の着物ならその丈はもっと長いだろう。女の着ている服の丈は、せいぜい腿までの長さしかない。
 爪牙とは違い、人間と同じ愛らしい印象の顔立ちをしているが、その目はどこか狂気を孕んでいた。
「なに、所詮は実験であろう。『あれ』が人間以外にも扱えるのか、と言うな」
「ま、それは否定しなんすが……倒せたのなら、御の字と言う物でありんした」
「しかし、(オニ)の存在に気付けぬのは我が不覚。呆気ない幕引きに茫然自失よ」
「アレは爪牙たんのせいではないでありんす。全ては邪魔するあいつらのせいでありんしょう?」
 廓言葉を使うその女は、慰めるように爪牙の肩を軽く叩く。
 しかしその手に体温と言うものは存在しない。ただひんやりと、金属特有の冷たい感触があるだけだ。
「二〇〇八年でわっちが挽回しんす。多分、『あれ』との相性は、ガイアークが一番良いと思いんす故」
「ならば……気をつけるのだな。連中がまた、対応する戦士を送って来ないとも限らん」
「爪牙たんは優しゅうおすなぁ」
「廓言葉とは異なる言語が混じっておるぞ、ステラ」
 ステラと呼ばれたその女は、ニィとその口角を吊り上げ……
「では次はこのわっち、ガイアーク害務大臣、ムダニステラが、ゴーオンジャーをやっつけるでありんす」



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