クロスシリーズ

□五色の戦士、仮面の守護
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 先程の緑色の異形とは異なり、今度はスマートな、銀色の蠍を連想させる姿だった。同じ蠍でも、今の姿は生物らしい印象を受けたが、先程の紫色の方は鎧のような機械めいた印象が強い。
「じゃあ、やっぱり……!」
「だが! 俺は俺だ。全てのワームは俺が倒す。……俺自身も含めて。我が友カ・ガーミ、永遠のライバル天道。そして……」
 いきり立つ加賀美を制すように言うと、今度はちらりと「神代」がこちらを見た。
 未だ何が起こっているのかわからず、パニック状態になりつつある走輔と範人、そして冷静になろうとするがやはりパンク状態になりつつある大翔の三人を。
「この世界の戦士。炎神と共に戦うお前達にも、聞いて貰わなければならない。何しろ、この世界の危機……と言っても過言ではない」
「この世界の危機、だと?」
 訝る大翔に、彼は真剣な表情で頷く。今の所、異形とは言え悪意は感じられない。信用しても、良いように思えた。……もっとも、「擬態」と言う言葉が引っかかってはいたのだが。
「だが、まだ話すには早い。爺やが言っていた。急がば割れ間に落ちる、と。もう一人が今、他の面々を集めている。それまで待て」
「お祖母ちゃんが言っていた。急いても事は仕損じるな、ってな」
――それを言うなら「急がば回れ」と「急いては事を仕損じる」じゃないのかな?――
 普段聞く格言とは異なる言い回しで放たれた言葉達に、心の中で冷静に範人がツッコミを入れる。どうやら向こうでは加賀美が自分と同じ事を思っているらしく、軽く頭を押さえて苦笑を浮かべている。
「俺、何か訳わかんなくなって来ちまった……」
 奇妙な空気が漂う中、走輔は頭を抱えて考え込み、範人は持っていた荷物をどうしようかなぁとのんびり思い。そして大翔は、奇妙な胸騒ぎを覚えていた。
 ガイアークとは異なる、何か別種の悪意を……この時彼は、感じ取っていたのかもしれない。



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