クロスシリーズ

□五色の戦士、仮面の守護
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 彼らは腰に下げているホルスターから銃のような物を取り出すと、迷う事なく異形達に向かってエネルギー弾を発射する。
「成程、美しいだけではないと言う訳ですか」
 いつの間に隣に来たのだろう、風間が女性二人の方を見ながら、感心したように呟いている。
「もぉアニ! アニも見てないで変身して!」
 スペースシャトル型の何か……時に短剣のように振るい、時に銃のようにエネルギー弾を発射するそれを構えながら、銀色の女性が呆れたような、そして怒ったような声で矢車に言う。
――さっきから人違いだと言っているんだが?――
 僅かに苛立ちながらも、彼は深い……それはもう心底呆れ返ったような深い深い溜息を一つ吐き……
「良いよなぁ。正義の味方ぶってる奴は。……変身」
『Henshin』
『Change Kick-Hopper』
 電子音が響き、矢車の体を濁った沼のような暗い緑の鎧が覆う。マスクドライダーシステムの一つ、脚力が強化された、バッタをモチーフとした戦士。その目の色は、地獄の底を映しているかのような暗い赤。対を失った、哀れな存在。
 ……キックホッパー。ZECTではそう呼ばれる、蹴撃の戦士である。
「え!?」
「ゴーオンゴールドじゃないっす!?」
「どういう事だ!?」
 襲い来る灰色を蹴り飛ばす矢車を見て驚く面々。その様子を、風間がやれやれと言わんばかりの表情で見ているのが、非常に腹立たしい。
「フっ。どうやらゴーオンジャーだけでなく、仮面ライダーとやらもいるようだな!」
 機関車らしき怪物の言葉に、ピクリと矢車の体が震える。
「お前今……俺を笑ったな?」
 低く……殺意すら篭った声でそう言うと、矢車は高く飛び上がり、群がる灰色の異形を次々と上から踏み潰すようにしつつ、真直ぐに機関車のような異形の前へ降り立って、強化された脚力で強烈な蹴りを放つ。
「はぎゃっ!?」
 まさか一瞬で間合いを詰められるとは思っていなかったのか、その異形は情けない悲鳴を上げてよたよたと数歩、後ずさる。それを追撃せんと、矢車は再びその足を異形に伸ばすが……
「こ、これは一旦轢くしか……じゃなかった、退くしかないっ!」
 半ば涙声でそう言ったかと思うと、異形の姿が一瞬だけぶれ……そして、次の瞬間には矢車の、そして他の色取り取りの戦士達の視界から消えた。
「まさか……今のはクロックアップですか」
「……ちっ。逃げられたか」
 不審その物の声で言う風間に対して、矢車は相手がクロックアップした事よりも逃げられた事に苛立っているらしい。吐き捨てるようにそう言って、変身を解除する。
 そして……同様に変身を解除したカラフルな面々……あの異形はゴーオンジャーとか呼んでいた……に囲まれている事に気付く。
「ズバリ、イメチェン……じゃなさそうっすね」
「お前、何者だ?」
それも、あまり歓迎されていない雰囲気で。
――厄介な事になりそうだ――
 そう思いながら矢車もまた、彼らに向かって濁った瞳を向けるのであった。



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