クロスシリーズ

□五色の戦士、仮面の守護
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 ツエツエが割って入ったかと思うと、その杖を彼女の腰のベルト……正確にはそのデッキ部分に打ち付けたのです。
「きゃあっ!」
 本来ならぶつかるはずの体が吹き飛ばされたせいか、ガオタイガーは目標を見失い押さえていたヤバイバを解放してしまいます。
 更に、ツエツエに打ちつけられた場所が悪かったのでしょうか。
 タイガの耳にピシリと小さな音が届き……そして次の瞬間、パキンと鏡が割れるような軽い音を立て、腰に付いていたデッキが砕け散ったのです。
 それまで変身を支えていた物が砕けた為でしょうか。タイガの鎧は細かな粒子となって消え去ってしまいました。
「ふふふ……ほーっほっほっほっほ! やっぱりオルグの神は見放していなかったのね」
「さぁて、たっぷりと礼をさせてもらおうかねえ?」
「っ! ホワイト!!」
 低くドスの聞いた声で言うヤバイバの剣と高笑いを上げるツエツエの杖。その両方を向けられたホワイトを助けんと、他の戦士達が駆け寄ろうとした瞬間。
 フ、とシルバーの感覚に、風が何かを訴えかけたのです。
 しかしそれは、決して敵意や邪悪な衝動ではなく、どちらかといえば先程騎士達が現れた時に近いような……
「気持ち悪い。吐く。また吐くよぉぉぉ」
 二人のデュークオルグの後ろで、へろへろとしていたサンメンキョウオルグが、またしても唐突にそう言うと、再びその頭部が大きく開き……
 そこから、赤紫のエイに似た生き物と、その背に乗って同じ色の鎧を纏った騎士が飛び出したのです。
「何ぃ……へぶしっ!」
「ちょっと……きゃああぁぁ」
 エイはすれ違いざまにヤバイバとツエツエを弾き飛ばすと、ホワイトの前で止まり……
「こいつを届けに来た。……これは、君のだろう?」
 ストンとエイの背から飛び降りた騎士は、己の変身を解くと、ホワイトの目の前に金色の携帯電話を差し出したのです。
 それは、本来なら彼女が持つべき物。
 サンメンキョウオルグに吸い込まれた際、なくしたと思っていた大切な「つながり」。
「あたしのGフォン……」
 差し出されたGフォンをそっと手に取ると、ホワイトの口からは安堵の溜息が漏れたのでした。
 そしてそれとは対照的に、オルグ達は爛々と怒りに満ちた目で彼らを睨み付け……
「ちぃぃっ!」
「よくもあたし達の邪魔を!」
 その言葉を吐き出すと、ツエツエがサンメンキョウオルグに向って己の杖から出る光線を放ったのです。
 その光線は、サンメンキョウオルグの鏡の中で幾度も反射され、そして数回の反射を繰り返し、増幅されたそれをガオレンジャーに向けて放ったのでした。
『うわぁぁっ!』
 足元で爆ぜた土に弾かれ、その衝撃で解ける変身。そしてそんな彼らにホワイトは駆け寄り、そして現れた騎士達……浅倉と北岡を除く三名もまた、彼らを助け起こし……そして蝙蝠の騎士だった青年が問いかけます。
「まだ、戦えるか?」
「ああ。勿論。……全てのオルグを倒す。そうだろ、イエロー、ブルー、ブラック、ホワイト、シルバー!」
 レッドの答えと、そして直後にかけられた言葉に、他の五人が大きく頷きを返すのを見やると、龍の騎士の青年はこくりと一つ頷いて……
「わかった。戦わなければ生き残れないって言うのは、あまり好きじゃないけど。俺達も手伝うよ」
「……ありがとうございます」
 青年の声に笑みを返すと、レッドは……いえ、ガオレンジャー達は雄々しく立ち上がったのでした。



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