薄桜鬼ss
□よくある、あれ。
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ーーーー夏
「あっちぃ〜…ただいまー」
真夏の猛暑の中昼の巡察を終えて屯所へと帰ってきた藤堂と沖田に、ちょうど通りかかった原田が声を掛ける。
「おー平助、総司も。帰ってきたのか」
「佐之さんー…もうあっつくて俺まじで死にそうだよー…」
額の汗を拭いながらそう言った藤堂に、原田はくっくと笑いながら背中を叩く。
「ま、元気出せって。今日は島原に行く予定だろ?」
その原田の一言に、藤堂は今までのげんなりした様子が嘘だったかのように目を輝かせた。
「そうだった!!よぉーっし、酒が飲めるーーー!!!!」
今にも踊り出しそうな程歓喜に震える藤堂を横目に、沖田はふと「島原かー…」と呟いた。
「まぁ確かにこの暑さじゃ、女の子にしてもお酒にしても何か癒しでもないと仕事なんかやってられないよね」
さすがの沖田も暑さには敵わないのか、じわりと滲み出た汗を拭いながらそう洩らした。
「お。なんだ、総司も行くか?」
「えっ、なになに、今日は総司も島原行くの!?珍しいじゃん!」
「やだな、行くわけないじゃない。僕今日は千鶴ちゃんにご奉仕してもらう約束してるんだもの」
突然落とされた沖田の爆弾発言に、藤堂は目を見開きながらも焦ったように言葉を紡ぐ。
「えっ、な、なに冗談言ってんだよ総司〜…!千鶴がそんなことするわけないじゃん!!」
「ああ、なんだ総司だったのか。俺も今日千鶴に頼んだんだけど先約があるからって断られたんだよな」
「早い者勝ちだよ、佐之さん。今日は僕が千鶴ちゃんに癒して貰うんだから」
さらりと爆弾発言を落とし合う原田と沖田に、藤堂は顔を真っ赤にさせながらあたふたと目を泳がせる。
「ななな、なに言ってんの二人とも!?なんか変なもん食ったの!!?」
「ん?…なんだ平助、まだ千鶴にシて貰ったことないのか?」
「千鶴ちゃん、ああ見えて凄いよ。平助も今度シて貰ったらいいんじゃない?」
きょとんとして言う原田とクス、と楽しげな笑みを浮かべて言う沖田に、藤堂は更に顔を赤くした。
「い、今の話、本当ですか……!?」
ふと横から声が入り三人がそちらに目を向けると、そこには藤堂同様顔を真っ赤にした山崎が立ち尽くしていた。
「お二人は雪村君にそんなことをさせていたんですか…!?」
「そんなことも何も…千鶴がご奉仕させて下さいって言ってきたんだぜ?」
「そうそう、千鶴ちゃんも何か僕たちの役に立ちたかったんだってさ」
「だからってそんな……っ」
口ごもった山崎と藤堂が困惑した様子で顔を見合わせていると、そこにタイミングが良いのか悪いのか千鶴が通りかかった。
すかさず上機嫌の沖田が手招きすると、千鶴は笑顔を浮かべて四人の元に駆け寄る。
「ね、千鶴ちゃん。今日は僕にご奉仕してくれるんだよね?約束したもんね」
「はい、夕食の後お部屋に伺いますね!」
張り切った様子でそう言った千鶴に、藤堂と山崎の二人は焦ったように口を挟んだ。
「ち、千鶴?総司とか佐之さんに無理矢理やらされてるんだろ!?そうだよな?」
「お、おい平助、人聞き悪いこと言うなよ」
「そうだよ〜僕と佐之さんが千鶴ちゃんに無理矢理させるわけないじゃない」
平助の言葉に横槍を入れる二人を余所に、山崎が千鶴の両肩をがしっと掴む。
「雪村君、嫌なら嫌と断った方が良い…」
「嫌なんかじゃないです!むしろ皆さんのお役に立てるなら、私何だってします」
にっこりと満面の笑みでそう言われた山崎は成す術もなく、その場で硬直してしまった。
(なんでも……だと…!?)
こんなにも健気な少女に、なんてことをさせているんだと沖田と原田に鋭い視線を送る。
そんな山崎の視線を受け流しながら、沖田はいつものようににこにこと笑みを浮かべながら千鶴に歩み寄った。
「しかし、千鶴ちゃんも随分腕があがったよねぇ。最初シてもらった時なんか、全然気持ちよくなかったのにさ」
「だよなぁ、やっぱ回数重ねりゃ上手くなるもんだな。千鶴にシてもらうのが一番気持ちいいぜ」
「そ、そうですか…?そんなこと言われると照れちゃいますね」
そう言って頬を少し赤らめてはにかむ千鶴に藤堂と山崎がやるせない表情を浮かべていると、ふいに山南が通りかかった。
「…ああ、ここにいましたか、雪村君」
千鶴を見て安堵の表情を浮かべた山南は、どこか疲れたような表情でこちらへと歩いてくる。
「申し訳ありませんが、今日もお願いしても構いませんか。できれば今からでも…」
「あれ、山南さんも千鶴ちゃんにご奉仕してもらってるんですか?気持ちいいですよね、この子にシてもらうと」
にこやかにそう問い掛けた沖田に、山南も同じように柔らかい笑みを浮かべて返す。
「ええ。週に一、二回はお願いしています。でなければ溜まって仕方ありませんからね…」
「しゅ、週に二回…!!!?」
「たっ…溜まってって…!!!!」
続けざまに投下された爆弾発言に藤堂と山崎はついに山南にまで声を上げた。
何事かと眉を寄せる山南に、千鶴は慌てて駆け寄る。
「そんなに溜まってるんですか、山南さん…ちょうど手が空いてるので任せてください!」
「ええ、頼みますよ」
「ち、千鶴!?」
「雪村君…!?」
山南の後をついていった千鶴の後ろを、やむを得ず藤堂と山崎も慌ててついていくことにした。