薄桜鬼ss

□思いの伝え方
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「新選組の屯所に火でも放ったらいいんじゃねぇか?奴らに一泡吹かせてやろうぜ」



 そんな物騒な言葉を耳にしたのは、一番組の昼の巡察に同行していた時だった。
声に気付いてパッと振り返った千鶴と目が合うと、浪士達はすっと細道へと体を滑り込ませた。

 慌てて沖田へ伝えようとしたが、何やら少し離れた所で別の不逞浪士ともめているようだ。
咄嗟に千鶴は先程の不逞浪士達を見失わないよう、後を追って細道へと駆け込んだ。


「ーーーっ千鶴ちゃん?どこいくの!?」


 浪士達と斬り合いになっていた沖田は手近な浪士達を全て凪ぎ払うと、慌てて千鶴の後を追った。




 結局その後暫くして浪士達に囲まれていた千鶴を発見した沖田は、そこにいた浪士らを全員斬り捨てて足早に千鶴を屯所へと連れ帰った。


「馬鹿野郎!!何考えてやがる!!」

 部屋中に響き渡る土方の怒声に思わず目を閉じてびくりと肩を震わせた千鶴は、しかし強い眼差しで土方を見詰め返す。


「でも…あの時はああするしかありませんでした!あのまま取り逃がしていたら、この屯所が火事になってたかもしれません!」


「だからってお前一人で追いかけて何ができるってんだ!大した力もねぇ女が出しゃばるな!!」


「皆さんの力になりたいって思って何が悪いんですか!何もせずにただ守られてるのはもう嫌なんです!!それに、護身術も習っていたんですから自分の身ぐらいーー」

「結局は何も出来ずに総司に守られてんじゃねぇか!刀抜く覚悟もねぇんなら端っから危ねぇことに首突っ込むんじゃねぇ!!」


 珍しく大声を張り上げて言い合いをしている二人を静かに見ていた沖田は、小さく息をついた。
千鶴は納得いっていないのか、息を切らしながらも未だ臨戦状態で何かを言おうとしている。
そんな千鶴の様子に苦々しく舌打ちをした土方は、もう用はないと言わんばかりに背を向けて机へ向かって書き物を再開した。


「…頭冷やすまで当分巡察に同行すんじゃねぇ」


「なっ…それじゃあ父を探しに行けませんっ」
「分かんねぇのか!!」
 

 語尾に被せるようにして声を張り上げた土方に、千鶴は再びびくりと肩を震わせた。
そんな千鶴を横目で冷たく一瞥すると、土方は低い声で言い放った。

「お前は他の隊士の足手まといだ」
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