*story

□涙ノ空
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「おっ 沖田さんっ!?」



「それ…僕の涙」



急に抱きしめられて
驚く千鶴をさえぎって
沖田は小さくつぶやいた。


千鶴の涙が同情の涙なんかじゃ
ないって事に沖田は気付いていた。

もしそんな軽率な子なら
病の事を聞いた時に
泣き散らしてみんなに
言いまくっていただろうから。



「きっと泣きたかったの僕だから。
でもそれができない僕のかわりに
泣いてくれるんでしょ」



耳元で小さく ありがとう と
つけたすと
今まで恥ずかしそうに聞いていた
千鶴ちゃんが
ぎゅっと僕の背中を掴んだ。



「やっぱり…沖田さんが…
いなくなってしまうのは
怖いっ…から…」



まだしゃくりあげながら
必死に伝えようとする千鶴。

自然と抱きしめる手に
力がはいった。




あぁ
僕のためにこんなに
泣いてくれる子がいるんだ…





胸に暑いものが込み上げて
くるのが分かる。

僕は今、こんかにも
この子が愛おしい















「ほら、もう泣かないの。
これじゃ僕が
何かしたみたいじゃない」



そっと離して冗談めかした
声でいう沖田に千鶴は
涙跡の残る顔で
小さく笑って頷いた。

沖田もつられて優しく笑う



優しい風が
二人を包み込んだ。












彼女を見つめる彼の目に
もう迷いはない。



ーーend

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