*story 2

真紅
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「これで分かった?
君は弱い。 脆い。
でもね…僕なら――――」



美しく歪んだ顔。
ヒヤリと首筋に感じる何か。



「痛っ…」



皮膚を裂かれる痛みと共に流れ出したそれを恍惚と見つめる羅刹。
そこには先程までの嘲けも哀れみも宿っておらず、あるのはただ一つ 狂気




そのまま乱暴に押し倒された。
だが病に蝕まれた体は抵抗することすら叶わない。

それがもどかしくて必死に睨みつけるが羅刹の表情はますます美しく歪んだ。




「なっ あっ…ふぁ…っ」



突如感じた生暖かい感覚。

首筋に這わされた舌は容赦なく傷に触れ、流れ出た血を一滴もこぼすまいと必要以上に舐め上げた。



「ほら、ここの血はこんなに綺麗で美味しいのに」



羅刹は、馬乗りの状態から身動きのとれない沖田の顎を掴み上げ鼻が触れそうなまでに顔を近づけた。

翡翠と真紅が交差する。






「君は土方さんを守れない。
このままだといつか、君が土方さんを殺すんだよ」













――――――――…。





僕があの人を殺す…?
分からない
僕の存在があの人を……












「…ごほっ げほっ…あっ」



狙ってきたような咳の発作。
胸が苦しい。

でもこの苦しさは咳のせいだけ?
ねぇ 土方さん ねぇ…



唇の端からつうと一筋
紅い血が流れた。



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