*story 2

僕僕.君
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分かってた。
明日来るかもしれない"101年目"








久々に二人で外出をした。

この所思わしくなかった総司の体調が今日は妙に良い。
起き上がるのすらつらい日もあるというのに いきなり散歩に出たいなどと言うから心底驚いた。


もちろん止めたが、動けるうちに一くんと遊びたいから と半ば強引に言いくるめられ 夕暮れ、総司の"とっておきの場所"に連れて来られたのだ。


"とっておきの場所"と称されたのは二人の家の近くにある小さな丘。
葉桜が新緑を匂わせて、新しい命が咲き乱れていた。




「一くん、膝枕してよ」



目の前に広がる美しい景色に目を細めていた斎藤の腕を 突然沖田が引っ張る。



「な、何故…?」



いきなりの注文に淡く頬を染める斎藤を、甘えたような顔が覗き込む。



「駄目?一くんは僕の事嫌い?」



「そんな事は…」


「僕は好きだよ」



斎藤の言葉を遮るように発せられた愛の言葉。

最近沖田はこんな風に焦るように甘える事が多くなった。



「って言うか、一くんを嫌いになる方法なんて忘れちゃった」



無邪気な笑顔を前に 頬を一層赤くしながら斎藤は膝を折った。






総司、アンタはずるい。
何の躊躇いもなく、
俺を好きだと言う。
惜しみもなく愛をくれる。
なのに俺はそれを返せるほどに想いを伝えられない。





膝に乗った愛しい人の髪を斎藤の華奢な指が梳いていく。

心地良さそうに沖田は目を閉じた。








優しい風が二人を色づけて―――


















「―――――――…ごめんね」













ふいに紡がれた声音に群青の髪が揺れる。
見下ろした先には
泣き笑いのような
翡翠の瞳があった。







あぁ、僕は今どんな顔してる?
これじゃあ一くん
びっくりしちゃうかな…







「総司…?」



「あのね一くん。 もし、もしもさ
この先君が どこかの女の人と
普通の幸せを手に入れたとして、
それでも僕は…
僕は君の一部でいられるのかな」




焦りの混じった声。

突然の問いに彼が目を見張るのが沖田にも分かった。


こんな事言ったって
また一くんを困らせるだけ

分かってる

分かってるのに心がごねるの…

言葉が止まらない



「君の愛する…何かでいられるのかな…」



消えてしまいそうな願い。
胸を締め付ける微かな痛み。

俺はそのまま空を見上げた。
このままだと、一番見せたくない姿を晒してしまいそうだったから。


そして
恐る恐る伝えるべき言葉を選ぶ。



「…当たり前だ。 アンタは大事な俺の一部だ。 離れてしまう事など…ない」



総司の顔を見る事なんかできない
これが俺の精一杯だった。

















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