比嘉
□君が目覚めるまで。
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「今日、外は珍しく少し寒かったですよ。咲。」
俺は、ベッドの上で寝ている君に静かに話しかける。
君が眠ってから、もう1年が経つだろう。
いつもと、同じように外の世界を君に伝える。
「今日も…起きないのですか?」
返答があるはずもないのに、俺はいつも聞いてしまう。
早く、目覚めて欲しい。
早く、君の笑顔が見たい…。
「…えーしろ…?」
か細い声が聞こえた。
君は、酸素マスクを着けたまま笑っていた。
「咲…。起きたのですか。」
俺がそう言うと、君は1年前と何も変わらない笑顔で、
「おは…よ。」
そう言った。
「永四郎に、逢いたかった…」
君の言葉が、嬉しかった。
俺の声が、聞こえたのが嬉しかった…。
「そうですか。咲…目覚めて良かった。」
俺は、君を抱きしめたまま泣いた。
久しぶりに涙を流した。
「永四郎に、泣き顔は似合わないから…笑って?」
君は、そう言った。
その一言さえ嬉しくて、涙を止められることは出来なかった。
ただ、
「好きですよ…咲。」
この言葉だけを口にしながら、君をずっと抱きしめた。
「ありがと…永四郎。私も、好きだよ。」
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