比嘉
□昔の想い出。
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「わん、うふっちゅになったら裕次郎とにーびちする!」
(私、大人になったら裕次郎と結婚する!)
そう言いながら笑う少女。
晴天の空の下、まぶしい笑顔の少女はいま、どうしているのだろう。
「…あながちさん夢ぐゎーやさぁ。」
(…懐かしい夢だなあ。)
懐かしい夢を見た。
まだ、俺が中学生だった頃、幼馴染だった彼女と約束した。
だけど、彼女は東京の高校に行ったっきりだ。
もう5年が過ぎようとしている。
「…ゆーじろー?」
後ろから、声が聞こえた。
聞き覚えのある、懐かしい優しい声。
振り返ってみた瞬間、俺は驚いた。
「…咲、なぬか?」
(…咲、なのか?)
そう呟いた俺の言葉に、彼女は頷いた。
「なげーさーややっさー、裕次郎。」
(久しぶりだね、裕次郎。)
彼女は笑った。
昔より、少し大人っぽくなった笑顔で。
「ちゃー待ってた。会いんかい来てくれてにふぇーな。」
(ずっと待ってた。会いに来てくれてありがとな。)
俺は彼女を抱きしめた。
今度は絶対離さない。
「咲…しちゅん。いっぺぇしちゅんやっさー。」
(咲…好き。大好きだ。)
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