フォルダ1

□寒い日。
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「寒いです」


両手をコートのポケットの中に入れながら、ルカは眉を寄せて言った。

鼻が少し赤くなっている。
そう言えば歩いてる途中も、鼻をスンスン鳴らしてたなあ、と思い返す。


「寒いの?」

「寒いです」


ルカはもう一度言って、マフラーを鼻の辺りまで上げようとする。
だが重力に勝てないらしく、口を隠すことで妥協したようだ。

マフラーと手袋を装備しているルカが、どちらもしていない俺より寒いというのは何故なんだろうか。


「早く家に帰って温まるか」

「それまで我慢出来ません」

「おいおい」

「なので、がくぽの上着を借ります」

「え?ちょっとルカさん!?止めなさい!!」


ルカはそう言うと、俺のジャケットのボタンを外そうとした。しかも躊躇い無く。
もっとこう、恥じらいとかは無いんでしょうか。

てか、借りますって、決定事項だし。俺が貸すことはもう決まってる訳ですかそうですか。

そりゃ、寒そうなルカを見てると貸したくなっちゃうけどさ。でも、縮こまるルカも見ててかわいいからなあ。
って、そういう問題ではなく。


「ルカ、ルカ、俺もさすがにこれ脱いじゃうと寒いんだけど!」

「大丈夫です。私が温かくなります。
大人しく上着を貸しなさい」

「いやいやルカが温かくなっても、その対比で俺は寒くなるからね!?」

「私は温まる。貴方は寒くなる。
いいことずくめです」

「俺が寒がるのはいいことなのか!?」


うちのルカさんはクーデレだと思っていたが、どうやらS属性も少し入っていたようだ。

さすがに寒いのは嫌なので、俺はボタンに伸びてくるルカの両手を捕まえた。
ルカは腕を振って離れようとするが、何分、俺、男ですから。

無言で睨んでくるルカもかわいいなあとか思ったり。
抱き締めて頭撫でたくなったが、残念。
俺の手は2本しか無い。

……そうだ。


「そんなに寒いなら、熱くしてやるよ」


にやりと笑い、俺は顔をルカに近づける。嫌な予感がしたのか、びくりと一瞬震えたルカの耳に、とびきり甘い声で囁いた。


「愛してるよ、ルカ」


いたずら成功。

ルカの手から力が抜けていくのが分かる。俺は顔を離して、ルカの手を解放した。

ルカを見ると、おーおー、こりゃまた。ほっぺたがほんのり赤くなっている。
原因は、寒さじゃないんだろうな。


「ほっぺた赤いよ?」


にやにや笑いながら言うと、さっきより目をつり上げて睨まれた。


「寒いからです」

「ははっ、嘘嘘。照れて、いでっ!!」

「寒いからです!」


ツンとそっぽを向くルカがかわいくて。ついついからかうと、腹を殴られた。

殴られたのに、照れてるルカがかわいいと思う俺はマゾなのか?まあ、どっちでもいいか。ルカがかわいいから。


「まあまあ。ほら、温まったっしょ?」

「知りません」


桃色の髪に隠れてる耳は、きっと赤く染まってるんだろう。
ルカは、顔より耳が赤くなる子だから。


「ほらルカ、コンビニ寄ってこう。肉まん買おうよ」

「貴方の奢りですからね」

「はいはい」


なんせ、かわいいルカが見れたしな。いや、ルカはいつでもかわいいけど。
かわいいルカが見れたお礼に、肉まん位奢るさ。

俺はルカの手を握って歩きだした。
今度はルカは暴れなかった。





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