フォルダ1

□喫茶店。
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今日は近場でデート。と言っても、どこか適当に、ふらふら散歩をしているだけだけどな。

……で。
足が疲れたし喉が乾いたので、どこかの喫茶店に入ろうということになったのだが。


「……」

「ルカ?決まった?」


店の前のメニュー表を見ながら、ルカが悩んでいる。
飲み物はすぐに決まったのだが、おやつ……マフィンとスコーン、どちらにするかを決めかねているご様子。


「ルカはどっちが好きなんだ?」

「どっちも好きです」


ちなみにどちらも同じ値段なので、五十歩百歩、甲乙付けがたいようだ。こういう時、普段は安い方を選んでる。おい、貧乏性とか言うな。

おやつくらいで真剣に悩む様子が、ちょっとかわいいと思った。

だが、早くしてくれとも思う。俺はささっと決めてしまったので、ちょっと退屈してきた。言わないけれど。

ルカは眉を寄せて考えていたが、ふっと息をはいて、屈めていた腰を真っ直ぐにした。

「お、決まった?」

「スコーンにします」

「おう」


やっと決まった。とは言わない。機嫌を損ねると分かっているのに、わざわざ言うとか馬鹿らしい。

店内に入り、俺が2人分まとめて注文する。敷いてあるメニュー表を指差し、


「これと、これ。あと、スコーンとマフィンとひとつずつ」

「かしこまりました」


店員さんは笑顔で答え、ルカは表情を変えないまま俺を見た。

2人分の会計を済ませ、それぞれトレーを持って、空いている席に座る。けっこう席は空いている。まあ、お昼時をとっくに過ぎた時間帯だしな。


「いただきます」

「いただきます」


とりあえず、まずはコーヒーを飲む。渇いた喉に、アイスコーヒーが心地いい。ルカも頼んだものを飲んでいる。

名前が長くて、俺にはよく分からない。たぶんカフェオレ的なものだと思うんだが、普通にカフェオレでいいじゃないかと思ってしまう。

何故わざわざ名前を長くするんだろう。オシャレアピールか?


「がくぽ」

「ん?」


コップを持ったまま、ストローから口を離してルカが口を開く。


「どうしてマフィンを頼んだんですか?」


うわ、訊かれると思った。と言うか、訊かれなきゃ困るwww


「“どうして”って?」

「だってがくぽ、甘いものは苦手でしょう?」

「えーっと、まあ、苦手っちゃあ苦手だけど……」


ルカが怪訝そうな顔をする。


「ルカ、マフィンも食いたかったんだろ?だから買った。食っていいよ。食えなかったら俺が食うから」

「……気を遣わせましたね。すみません」


ルカが、わずかに眦を下げる。擬音語をつけるなら、しゅん、といったところだろうか。
そんなルカもかわいいけど、別にそういう顔が見たい訳じゃないんだがなあ。


「ええー、喜んでくんないの?笑ってくれるかと思って買ったのになあ」


わざと拗ねた風を装う。こっちの方が、ルカに効くし。
ルカは目をゆっくり瞬瞬かせてから、ふんわりと微笑んだ。


「ありがとうございます。いただきます」

「うん。どういたしまして」





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