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□不整脈の理由
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欲求不満が収まらない。
成長期の中学生男子である。もとから良い食べっぷりではあったが。
何だか最近、妙に可笑しい。
食べても食べても、満足感を得られない。
満腹感はあっても、もっと…と思ってしまうのだ。
「え、霧野…まだ食べるのか?」
「ああ、何か腹にたまんねーんだよな」
「へぇ…?…腹壊すなよ」
今日は日曜日。
部活中、休憩時に同じDFを努める後輩が、
最近俺、不整脈なんですよねー…と心配気に話していたことを思い出した。
最近俺も可笑しい。
何かの病気なのか?なんて本気で心配していたりする。
…そのことを親友に話せば、何言ってんだ、と失笑されて終わったが。
時間にして15分程前に遡る。
あー、腹減らないか?そうだなー、お、マックあるし…寄るか?
そんな流れで神童とファーストフード店へ入り、ハンバーガー(照り焼き)とフライドポテト(Lサイズ)、ナゲットにドリンクを買って席へと座った。
あー、結構食ったな。なんて正面の神童は笑っていたが、どうも笑えない。
何だか可笑しい。…腹は一杯なのに。
何か買ってくる、と席をたちもう一度レジへと並んだところで、見慣れた水色の髪が丁度会計をしていたことに気づいた。
(…あれ?もしかして…)
「あれ?霧野先輩?」
「…あー、おはよう」
「おはようって…さっきまで一緒に部活してたじゃないですか」
「あー、そうだったな」
「何か先輩変っスよ」
ケラケラと笑う狩屋を一瞥して注文を済ませる。手早く会計をしストロベリー味のシェイクを受け取れば、不思議に思ったのか「え…?」と、首を傾げていた。
「……何だ?」
「それだけですか?」
「いや、もう本命は食った」
「本命って……」
何かやらしい響きですねー、なんて笑ってる後輩は何故か俺の隣を何とも無しに歩いている。
(あ…?コイツ、一人で来ていたのか…?)
てっきり誰か一年とでも来ていたのかと思っていたが(大方松風あたりと)。
「…狩屋、お前一人か?」
違和感無くついてくるので、質問をしてみる。
別にこのまま三人で食べるのは俺的には全然嫌ではないが、狩屋が一人でこんなトコに来るのは意外だったから一応聞いておく。
すると、何言ってんスか、と失笑された。
「俺がこんなトコ一人で来ると思いますか?」
ああそうだよ疑問だよだから聞いたんだよ。
予想通りの答えに突っ込むタイミングを逃してしまった。
じゃあ何でついて来るんだお前は。
言い逃したその突っ込みは案外三秒後に明かされることになったのだが。
「…あ、狩屋ーっ!こっちこっちー」
「霧野先輩、こんにちは!」
「…………おー、松風と西園か」
成る程コイツはこの二人と来てたのか。
…というかちゃっかり神童も机合わせちゃってるよ何気二人の話を聞くいい先輩してたよ今。
「…あれ?霧野、それだけか?」
「え?…あー、なんか…」
「……そうか。良かったな」
「へ?」
ニコニコと微笑む神童を見て、俺はただただ首を傾げることしか出来なかった。
…コイツの意図と、欲求不満の意図がわかるのは大分先の話。
 
[不整脈の理由] 
 
(不整脈は、恋の訪れ)
(欲求不満は、寂しさ)
(霧野も狩屋も全く気づいてないけどな)
 
 
*神童は気づいていますという話。

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