short

□繋いで紡いで
1ページ/1ページ

どきどき、どきどき。
さっきから、心臓がまるで暴れているかのように速いリズムを打っている。
(やべ、すげー緊張してるっぽい俺…)
緊張というものが自分のキャラに合わないというのはとっくに気付いているものの、止め方を知らないのだから致し方ない…筈。
どうやら俺のキャラクターは冷静沈着、神童の右腕…とやららしい。
…意味わかんねぇ。
まぁ、あの生意気な後輩、狩屋が言っていただけだけど。
ところでそう、俺はいつまでここでこうして暴れまくる心臓を抑えておかなければならないのだろう。
 
 
[繋いで紡いで]
 
 
「…んだよもー。気付いてたんなら声かけろば狩屋」
「ばか!?…だって人ん家の玄関の前で百面相してるんですもん。ちょー声かけづらいですよ」
「うっ…」
狩屋の言うことに反論を返せなくなって視線を奥へと泳がす。
因みにここは狩屋の部屋。
なるほど、たしかにあの窓からなら玄関も覗けるだろう。
「…はぁ」
「何いっちょまえにため息なんてついてんですか」
「だってさぁ、いつもカッコイイ俺のまま狩屋といたいじゃん?」
「え…先輩ってカッコイイんですか?」
「え…カッコイくねぇの?」
「…んー…先輩の場合可愛いんじゃねー「オッケーブチ犯す」…カッコイイデスキリノセンパイ」
まぁとりあえず、狩屋によるとカッコイイ俺が恋人の家に入るのに緊張してただなんてカッコ悪すぎると。
恥ずかしいから穴に入りたいと。
でも穴はないと。
はぁぁ、やっぱ情けねぇ…。
「いーじゃん別に、っスよ。俺、かっこいい先輩も好きですけど馬鹿なところも好きっスよ?」
「まじでか」
ずずず、とストローを通してマンゴージュースを飲んでいる狩屋。
とうとう中身が空になったのかそれは空気を吸う音しかしなくなった。
ストローをがじがじと噛みながら愛しの恋人は呟く。
「だって抜け目のある人のほうが一緒にいて飽きないでしょ」
「狩屋ぁ〜〜〜〜愛してるっ」
「ぐぇっ」
溢れる愛情に従い思い切り抱きつくとカエルが潰れたような声が聞こえた…ような気がするけど気にしない。
 
 
(だってカッコ良くてなんでもできる先輩の抜けてるところなんて)
(見れるの俺くらいでしょ?)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ