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□俺の代わりに怒ってくれる?
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なあなあ神童。
そう言いながら俺の前に来たのは倉間だった。
「どうした?」
「ちょっと聞いてくれよ、…ったく」
はぁぁ、と随分と大きなため息をついて俺の隣のロッカーに寄りかかる。
どうした、と視線で先を促したら、俺の親友の名前が出てきた。
「ん?霧野?お前ら喧嘩したのか?」
「してねぇけど!」
「じゃあどうした?」
霧野に怒っているのか、どのような心情なのかは全くわからないが、穏やかでは無さそうだな、とは何となく察することができた。
「俺、今日の練習のときに狩屋と揉めたっつーか…口喧嘩したんだよね」
「うん。ちゃんと練習してような」
「スイマッセンキャプテン!…で、つい売り言葉に買い言葉で狩屋の家のこと言っちゃって…」
「どう考えてもお前が悪いだろう」
「自覚してます。…で、あ。やべ、と思った時はもう狩屋うるうる。殴りかかってきたからびびって…そしたら、霧野が来た」
「流石霧野」
親友はやはり親友であった。
何だか暖かい気持ちを生成すると、倉間はなんとも微妙な顔でこっちを見ていた。
「俺さ、アイツのお蔭で殴られずに済んだんだけどさ、…やっぱすぐ駆けつけただけあって会話聞いてたっぽいの。狩屋に馬鹿じゃねーの、って呆れてたけど俺のこと一瞬睨んだから」
「狩屋に謝ったか?」
「…………………………………まだ。ずっとあれから傍に霧野がいて…」
「………………………ああ」
そうか。
倉間は霧野に怒っているわけではない。
怯えているのか。
そう思えばさっきの微妙な表情も理解出来る。
「…じゃあお前は狩屋にちゃんと謝っておけよ?霧野には俺が伝えておくから」
「わかったけど………なんて?」
「倉間が反省してるって」
アイツには、それさえ伝えれば許してくれるだろ。
納得したのか倉間もああ…と唸った。
「悪い神童。助かるわ」
「おー。…もう狩屋に喧嘩売るなよ?もれなく霧野とも敵対するからな?」
「……………ああ。気ぃつける」
はぁ、と再び幸せの欠片を吐き出した倉間に、俺は最近とある後輩のせいで少しだけ良い方向に変わった親友の姿を思い浮かべて笑みを浮かべた。
 
 
 
[俺の代わりに怒ってくれる?(ありがとう)]

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