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□言葉あそび
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ぐるぐる。
俺の前で人差し指が円を描く。俺をトンボだとでも思っているのか?時々女に間違われたりするものの、どっからどう見ても人間じゃないか。
「ねぇ、いま何考えてます?」
「俺はヒトだぞっていうこと」
「何それ全然脈絡ない」
「そうか?」
「そう」
狩屋はトンボごっこにも飽きたのか俺から手を遠ざける。今日の狩屋はいつにもましてどこか可笑しい。いつもどっかボケてるけど。
「先輩は、俺のカノジョ?」
「いや、カレシだろ」
「…えー」
「何それ不満?」
うわー、霧野先輩傷つくー。
からかうように冗談混じりでそう言うと、焦ったようにぶんぶん首を振る。
そういうことじゃなくて。ってじゃあどういうこと?
「俺がオンナノコだったら良かったのに」
「オンナノコになりたいのか?」
「別に…そういうわけじゃない、けど」
俺が女だったら結婚出来たのになあ、先輩女っぽいし女になってよ。って、それってプロポーズ?
「お前みたいな暴力的なオンナノコいないだろ」
「失礼な」
「俺はお前がいいんだけどなあ。愛に性別なんて関係ないと思ってるし」
なあ、お前は?
まあ、俺もっスけど。
じゃあ良くね?
じゃあ良いっスね。
好きだよ。
俺も。
回りくどいようで単刀直入な言葉は俺たちの会話の根元にある。
 

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