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□プラトニックラブ
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流れ星がよぎった。きらきら。あ、と思ったときはもう遅い。何を願おうかなあ、なんて考えてたらいつのまにか見えなくなってた。願うことなんて、ひとつしかないのに。
 
[プラトニックラブ]
 
霧野先輩は全中が終わったらサッカー部を引退した。神童先輩達と時々部活に顔を出してくれたりするけど長居はしない。もとから頭の良い先輩はどうやら難関高を志望しているようだった。一年近く続けている恋人という関係だが、先輩の受験というのもありデートなんてマトモにしていない。
それでも、俺は先輩に合格して欲しいし、何より邪魔をしたくなかったから我慢できた。でも、こうして自分の思いに素直になってみると正直な気持ちが赤裸々に並んでいて恥ずかしい。会いたい。寂しい。話したい。抱きしめて欲しい。情けなくて笑える。残り1ヶ月だというのに。
窓硝子越しにはあ、と息を吐くと窓が白く曇った。きゅ、きゅ。人差し指で描いたのはたった四文字。別に流れ星の言い伝えを信じている訳ではないんだけど。
ピルルル。
ベッドの上に放り出しているスマホが主張している。んー、誰だよもー。耳にあてた受話器からは今の今まで思考を独占していた彼の声が聞こえた。
「よ、狩屋。元気?」
「…まあ、それなりには。…ていうか、いきなりどうしたんですか?」
「んー、なんか。おまえの声が聞きてえなーって」
「…っ!!?」
今日は星が綺麗だな。あ、そうそう狩屋。俺、さっき流れ星見たんだぜ。
耳元ではノイズ混じりの優しい彼の声が響いた。
「…願い事は?」
「え?」
「願い事。…したんですか?」
「…あー、まあ…ね」
「…なに?」
…それは、恥ずかしいかも。
照れたような声が愛おしくて楽しくなる。
結局15分くらい他愛のない会話しただけだけど、これだけで先輩の受験までなんとかもちそうだとホッとした。
 
(俺の願い事は'はやく狩屋を抱きしめる'こと)

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