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どうも、こんにちは。
第零話でお会いしましたヒロインこと苗字名前です。
私は今、この書類に鬼灯様のサインを頂きに、鬼灯様を探しています。
ですが見つかりません。
あの方は頼りになる御方ですので、色々な場所へ引っ張り出されるため中々見つかりません。
探すの…、飽きてきました。
誰か見掛けたら私の元に連れてきて下さい。
そんなことを思いながらふらふらしていたら、見つけました、鬼灯様。
あの大きな金棒と、赤と黒の衣は間違いなく鬼灯様です。
「鬼灯様」
「何です?」
「ここにサイン下さい」
「わかりました」
「こらああああ!話を反らすなああああ!」
怒鳴られました。
可笑しいですね、まだミスは犯していないはずです。
つまりは誰にも怒られる筋合いはありません。なのに怒鳴られました。不服です。
声がした方を見れば、そこには人間が一人と犬猿雉が一匹ずついらっしゃいました。何者でしょうか。
「何やら面白い団体がいますね。今から催し物でもあるんですか」
「誰が鬼の催し物などに参加するかあああ!ていうか面白い団体ってなんだ!俺の名は桃太郎だ!」
「そうですか…」
さて、サインも貰ったことですし、さっさと部署に帰って事務所に引きこもりましょう。
「こらこらこらああああ!散々俺を貶しておいて帰ろうとするなんて何様だお前!」
物理的な意味で行くてを塞がれました。
私の前で両手を広げて道を開けてくれません。
何ということでしょう。
桃太郎と言えば悪い鬼を退治した英雄…だと聞いていましたが、実際はただのいじめっ子でした。ガッカリです。
仕方ないので広げられた腕を潜って突破します。
後ろからギャーギャーと騒音が聞こえますが、無視です。無視。総無視です。
「鬼灯様…あの方は一体?」
「苗字名前さんという方で…阿鼻地獄勤務です。」
「阿鼻地獄ですか…。何だか彼女には似合わない勤め先ですね」
「そうですね…」
「(お腹空きました。食堂に行ってから書類を提出しましょう。)」
後日になって小耳に挟んだのですが、どうやら桃太郎さんは桃源郷で。その傘下の方達は不喜処で働くことになったそうです。
桃太郎が空気。それ以前に犬猿雉がもっと空気。