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□08
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大王様の所に仕事の書類を持っていったら、そこにはシロさん、柿助さん、ルリオさんがいらっしゃいました。
桃太郎さんの元傘下の方々です。
現在は不喜処で御活躍中です。
彼らとは、桃太郎さんを通じて仲良くさせてもらっています。

「こんにちは」

「あ、名前さん。こんにちは。」

「お疲れさまです。」

「ねえ、名前さん、お願い!一緒に鬼灯様の部屋に行くの付いてきて!」

話を聞けば、今日は非番なので、鬼灯様にお仕事のアドバイスを頂きに来たのですが、鬼灯様も今日はお休みで、今は自室で眠っていらっしゃるとのこと。
そろそろお昼時なので、起こしてもいい頃合いですが、下手に起こすと、大王様の経験上、強烈な蹴りが襲ってくるかもしれないので、シロさん達は少し不安なようです。
私はこの資料を大王様に届ければ、午前の仕事は終わりですので、仕事に支障は出ませんし、何よりシロさん達の行方が気になるので了承しました。
大王様から、気を付けてねとお言葉を頂き、早速教えられた通りに鬼灯様のお部屋へ向かいます。

「…なんか既に威圧感があるな……」

「インディー・ジョーンズってこんな気分なのかな……」

「何だか緊張しますね」

慎重に扉を開ければ、あ…居ました。ベッドの上に鬼灯様が居ました。
まだ夢の中のようです。ちょっとやそっとの音では起きないようです。
鬼灯様は爆睡型なんですね。
シロさん達もそれで少し緊張が弛んだのか、鬼灯様のお部屋を見始めています。

「皆さん、あんまり物に触っちゃ駄目ですよ」

「「「はーい」」」

誰かが寝ている側だと、自然と小さな声で話をしてしまいますね。
それぞれに鬼灯様の部屋を堪能している横で、私は崩れそうになっている本の山を整えていると、シロさん達がビクッとしたので、何かと思えば、鬼灯様が寝返りを打ったようでした。先程まで向こう側を向いていた顔が此方を向いています。
あ、頬に跡がついています。
枕に角が刺さるので俯せには寝れないんですね。
ちなみに私は横に付いているので、逆に俯せか仰向けにしか寝れません。

「他人の寝顔って見ていて和みますね」

「そう?」

「はい。私は今、鬼灯様の寝顔を写メりたいです」

「それは後が怖いから止めた方がいいと思う!」

勿論、冗談ですよ。
でも、和むというのは本当です。
何となく手をその頭に乗せてみました。
さらさらしてます。
ふわふわしてます。
普段触ることなんて出来ませんからね、ちょっと得した気分です。
さて、本題ですが。

「起こしますか?」

「「「………。」」」

私達が部屋に入っても、触れても、まだ目を覚まさない鬼灯様。
相当疲れていたのでしょう。
結局、シロさん達は起こすのを止めにしました。
賢明だと思います。

「鬼灯様、ゆっくり寝てね。」

「ああ…全ての社会人がぐっすり眠れる世が来ないかな…」

「子守唄でも歌ってあげよう」

「いや…もう寝付いていますよ」

私のツッコミをスルーしてシロさんが披露されたのは、まさかの『ギザギザハート』。子守唄でまさかのギザギザハートという選曲に、ルリオさんが素早くツッコミを入れますが、ツッコミ役の彼が「ここは俺に任せろ」と自信満々に歌い出したのは、これまたまさかの『にんげんっていいな』。

「ギャアアアアア!ルリオ、それエンディング!子守唄はオープニング!」

「チッ…チクショウ!鳥の歌声はチキルームだ!」

「つられてしまうっ!」

今度は三匹全員で歌い始めました。
可愛いです。
無意識のうちに手拍子を打ち始めてしまうくらい可愛いです。
しかも背景が見えます。夕暮れ時の背景が見えます。
みんなの○たで流しても文句は言われない程の完成度です。

“いいな いいな”
“にんげんっていいな”

“おいしいおやつにほかほかごはん”
“こどものかえりをまってるだろな”

「あ…」

“ぼくもかえろ”
“おうちへかえろ”

鬼灯様が起床されました。

「ギャアアアアア!!」

シロさんが悲鳴を上げています。
蹴られます。蹴られるかもです。
反射的にルリオさんと柿助さんを脇に担いで出口付近まで下がります。

「…でんでんでんぐりかえって…」

「バイッバイッバイッ!!!」

「待ちなさい」

嗚呼…鬼灯様がシロさんの尻尾を掴みました。もう逃げられません。
シロさんが逃げようとバタバタしています。
シロさん…私、応急措置は身につけていますから、蹴られても後は安心して下さい。ここには、二次元マジックで用意した救急箱もありますから。
シロさんが蹴られる前提で事の成り行きを見守っていたのですが、どうやらシロさんは蹴られずに済んだそうです。良かったですね。

「名前さん!なんで柿助とルリオは助けて俺は助けてくれなかったの!」

「すみません。シロさんは、鬼灯様に一番近い位置にいらっしゃったので無理でした。」

「…貴方も居たんですか…」

「はい、お邪魔しています。彼らの付き添い人です。」

両手でブイサインを作って鬼灯様の方へ向ければ、ため息を吐かれました。
何にせよ、鬼灯様が目を覚まされたので私の任務は達成されました。
お着替えをするようですし、私は部屋の外へ出ることにしましょう。
誰にも何も言わずに出てきちゃいましたが、まあ何とかなるでしょう。

「うーん、やっぱり寝顔は写真に納めておくべきでした」

さて、午後の仕事もありますし、お昼を食べに行きましょう。




後日、私の携帯に、寝顔フォルダーというものができました。



物凄く書きにくい話だった。
本編を読まないと理解不能だコレ。
鬼灯様の寝顔写メりたい。

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