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今日は待ちに待った運動会です。
私は今年も応援席に引きこもります。
スポーツは観て楽しむものなのです。

「いや、実戦して楽しむものでしょう?」

「いやいや、観て楽しむものです」

私は今、桃太郎さんの横に腰を下ろして観戦します。
白澤様に膝の上に座るよう促されましたが、断っておきました。
それにしても此処は良い観戦席ですね。
友人もいますし、ウサギをもふもふ出来ますし。
よし、来年から此処に引きこもりましょう。

「じゃあ、名前ちゃんは参加しないの?」

「しませんよ」

「そうなの?まあ、僕は構わないけどねー。こうして名前ちゃんと一緒にいられるわけだし!」

横から白澤様に抱き締められました。
本当にスキンシップの多い方です。
本部の方から何か棒状の物が飛んできましたが、きっと鬼灯様が投げた物でしょう、お陰で白澤様から解放されました。

あ、玉入れが始まったようです。
でも、使われている玉が何だか可笑しいです。

「玉入れの玉がなんか泥団子ッスよ…。」

「鬼灯(アイツ)、何考えてんだろうね。」

今、本部から玉の説明がありました。
玉はスカラベ(フンコロガシ)さんが作ってくれたそうです。
うーん、尚更やりたくないです。
玉入れは、運動会で参加してもいいかなリストに入っていた競技だったのですが、たった今除外されました。

大会委員長が鬼灯様になっただけでここまで変わるとは、恐ろしい方です。
私のスポーツへの関心が更に無くなりました。

『続きまして、"生き残るのは誰だ!?ドキドキ☆サバイバルゲーム"』

「待ってください。こんなの原作にありませんでした。嫌な予感がします」

「原作とか言っちゃ駄目ですよ」

『この競技にエントリーしていようといなかろうと、今から名前を呼ばれた方は前に出てきて下さい。選手が出揃い次第、問答無用でバトル開始です。まず一人目は…、…苗字 名前さん。』

「棄権します」

『駄目です。続いて二人目は…』

酷い。酷すぎます。
鬼灯様の鬼!
いや、鬼ですけど…人間界の比喩的な意味で鬼…!鬼…!

「嫌です、やりたくないです」

「しかも名前さん以外、全員男じゃないですか…女性にとってこれは不利ですよ。」

「死にます。今すぐ家に帰りたいです」

「おい鬼灯テメー、名前ちゃんが怪我したらどうすんだ!」

『その為の貴方達でしょう。さあ、苗字さん、早く前へ。』

「参加しませんよ、私絶対に参加しませんよ」

『尚、この競技のみ、勝者には景品としてウサギのぬいぐるみが贈られます。』

「はいはーい、参加しまーす」

机を飛び越え、いざグラウンド(戦場)へ向かいます。
後ろで桃太郎さんがツッコミを入れていますが、ウサギのぬいぐるみを景品として持ってこられては出るしかないでしょう。
白澤様からも、戻っておいでーと声を掛けられていますが、ウサギのぬいぐるみと共に帰還しますので、暫しの間お待ち下さい。
あ…。

「鬼灯様」

「何です?」

「金棒、貸してください」

「構いませんが…」

「わーい」

重いですから気を付けて下さいね、と言って差し出された金棒を受け取って準備万端です。
これで私の戦力はアップしました。
相手の方も武器をお持ちになっているようなので、金棒の持ち込みは反則にはならないでしょう。

「名前ちゃん、大丈夫?鬼灯君は駄目だって言ったけど、棄権しても良いんだよ?」

大王様の優しいお言葉にちょっぴり感動しながら、大丈夫ですと一言返して、今度こそ本当に戦場へ向かいます。
私以外、全員男性です。
でもそんなの関係ありません。
視界の隅に入った景品のウサギのぬいぐるみに思いの全てを馳せて、金棒を構えます。

『それでは、位置についてー、よーい…ドンッ!』


♂♀


「…瞬殺でしたね。」

「瞬殺だったねー。」

「もっふもふー」

無事にウサギをゲットすることが出来ました。




後日、運動会の本番が行われた際には、犬のぬいぐるみをゲットしました。



阿鼻地獄で働いているだけはあるよ!

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