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居ません。
居ません。
どこにも鬼灯様がいらっしゃいません。
この資料を届けなければならないのに、いくら探しても見つかりません。
これは大事件です。
鬼灯様が何者かによって拉致されたとしか思えません。
おのれ、誘拐犯め。
あの鬼灯様を誘拐するとは、かなりのやり手ですね。
ですが相手がどんな方であろうと鬼灯様を誘拐するなんて許せません。
私が必ず助け出します。
待っていて下さい、鬼灯様。
…まあ、冗談は程々にしておきましょう。
ですがいらっしゃらないのは本当です。
しかしよくよく考えてみれば、今日は総括会議の日でした。
居るはずがありません。
仕方ないので鬼灯様の執務室の机の上に提出しておくことにしましょう。
ということで、失礼しまーす。

「うーん、やっぱり誰も居ませんね。」

いつもは必ず誰かいる執務室の静かさにちょっぴり違和感を感じながら、机の上に資料を置きます。
一応大事な資料なのでメモを残しておきましょう。
えーっと…、「超大事」
ふう、こんなもんで良いでしょう。シンプルイズベストが私のモットーです。
そう思いながら部署に帰ろうと、ドアノブに手を掛けようとした時でした。
私が開ける前に、勝手にドアが開いたのです。
驚いて視線を上げれば、そこには鬼灯様がいらっしゃいました。
総括会議、終わったんですね。

「おかえりなさい、あなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも、し・ご・と?」

「………。」

無言のまま、手刀で頭を割かれんばかりの勢いで叩かれました。
流石鬼灯様クオリティー。
半端無く痛いです。
私としたことが、悪ふざけする相手を見誤りました。何たる失態。

「痛いです」

「手加減しました。」

「あれで手加減したんですか」

叩かれた時、一瞬暗転したのですが…。
でも手加減してくれていたんですね。
ありがとうございます。

「それで…ここで何を?」

「重要書類をお届けに上がりました」

机の方を指差せば、鬼灯様はその書類を確認すべく机の方へ向かいました。
私が持ってきた以外にも鬼灯様の机の上には書類が沢山ありますから、メモが貼ってあるやつですとヒントを出してあげました。
どれか分かったようですね。
しかしその書類を手にしてこちらを振り返った鬼灯様の表情は苦いものでした。

「…次はもうちょっと重要感のあるメモにして下さい。」

「善処します」

この後、鬼灯様からピーチ・マキさんのサインを貰いました。
偶然、電車の席がお隣だったそうです。
私が前にマキさん可愛いって言っていたのを覚えていてくれて、態々貰ってきてくれたそうです。
嬉しいです。とても嬉しいです。
宝物が一つ追加されました。




後日、色紙は額縁に入れられました。



鬼灯さんが色紙を持っていたのは勿論二次元マジック。

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