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閻魔殿に行けば、見知った顔ぶれが揃っていらっしゃいました。
大王様と鬼灯様、それにシロさん、ルリオさん、柿助さんです。
皆さん何やら鏡を覗きこんでいます。楽しそうです。
もしかしてアレでしょうか。自分の心の一番奥底にある望みが見えるという某魔法学校でお馴染みのあの鏡でしょうか。
いえいえ、あれは浄玻璃の鏡といって、亡者の現世での行いを映す鏡です。真実を映し出してくれるので、絶対的な証拠として、亡者の裁判に用いられています。
ざっくり言えば、過去を見れる鏡なのです。
シロさん達は、一体どんな過去を見ているのでしょう。気になります。

「何を見てるんですか?」

「あ、名前さん!」

「鬼灯様がオーストラリア行ったときのやつだよ。」

あ、本当です。キャスケットを被った鬼灯様と見慣れない土地が映っています。
そう言えば、以前、オーストラリアのお土産で、鬼灯様からコアラのぬいぐるみを頂きました。きっと、その時のでしょう。

ちらりと鬼灯様を伺えば、少し困ったような顔をされていました。
自分の思い出の一ページを見られているわけですから、誰でも同じような反応をするでしょう。
…なんだか見にくいです。
でも、私も見たいです。
私も見ていいですか?と、鬼灯様に目で訴えます。
すると、私に気付いた鬼灯様は、ため息を吐かれました。
きっと許して頂けたのでしょう。口元が緩んだのが、自分でも分かりました。

「オーストラリアの動物園ですか」

「はい」

「いいですね。いつか私も行きたいです」

シロさん達に混じりながら、鏡を覗き込みます。
何やら鬼灯様が動物園の従業員さんに話し掛けられていますね。
ハッ…、コアラ…、コアラです!
コアラが登場しました。
嗚呼、鬼灯様がコアラを抱っこしています。もふもふしています。私も混ざりたいです。
うーん、双方とも表情が穏やかですね。これは癒されます。それに鬼灯様のこのような表情はとても稀です。
これは何かに納めなければ。

「写真…写真…、…あっ」

ちょうど携帯を取り出したところで、鬼灯様に映像を消されてしまいました。






後日、取り損ねた鬼灯様とコアラのツーショットを写真におさめようと、こっそり浄玻璃の鏡をいじっていたのですが、先に鬼灯様に見つかってしまいました。



「怒られました」
「まるでお母さんのようでした」
「『お母さん、ごめんなさい』と謝罪したら、追加でもう一時間説教されました」
「反省」

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